中小企業診断士 坂本 直紀
最近は、顧問先等からメンタルヘルスのご相談が増えています。メンタルヘルスには様々な要因が考えられますが、ここでは過重労働とメンタルヘルスについて整理してみました。
1.過重労働による健康障害の判断
時間外・休日労働時間が月45時間を超えると次第に健康障害のリスクが高まり、月100時間を超えたり、2~6月平均で月80時間を超えますと、健康障害のリスクはとても高くなるといわれています。労働安全衛生法では、一定の要件に該当すれば医師による面接指導を行う義務が生じ、事業者は社員の健康管理に配慮する必要が生じてきます。
2.過重労働による心理的負荷と精神障害
労災における業務上・外の判断は、職場における心理的負荷評価表を用いて、精神障害を発病させるおそれがあるか否かを検討します。そして、過重労働と業務上の精神障害の発病との関係については、以下の通り取り扱われています。
「出来事に伴う変化を評価するに当たっては、仕事の量、質、責任、職場の人的・物的環境、支援・協力体制等について検討することとするが、特に、恒常的な長時間労働は、精神障害発病の準備状態を形成する要因となる可能性が高いとされていることから、業務による心理的負荷の評価に当たっては十分考慮することとする。」(厚生労働省「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」による)。
以上のように長時間労働により業務に過重性が生じたときは精神障害を引き起こす可能性が高いとされていることを経営者や職場の管理職はよく理解すべきでしょう。
3.企業に求められる対策
次に、企業が採るべきと考えられる過重労働対策について説明します。
(1)トップのリーダーシップ
とても重要なことです。なぜならば、いくら表面的に過重労働対策を実施しても運用が形骸化していれば、まるで意味をなさないからです。トップの、何が何でも過重労働は阻止するという熱い気持ちが大切です。
(2)就業規則の見直し
例えば、残業の事前申請、事後報告等を規定化し、適切に業務と労働時間管理を行うことが重要です
(3)安全衛生委員会、産業医等の活用
安全衛生委員会(または衛生委員会)、産業医が適切に社員の健康管理を実施することも重要です。
(4)管理者の意識改革
現場の管理者の役割も重要です。そのためには、管理職が過重労働対策についての重要性を認識する必要があります。
(5)休暇の取得・促進
休暇を取得することは、心身の疲労回復につながります。
(6)自己管理
健康問題は、やはり社員一人一人が自覚を持つことが重要です。
(7)業務改善
過重労働を抑制するには、労働時間の短縮化を図る必要があります。そのためには、業務の見直しや工夫が重要です。