組織を機能させる『人事ニアリング』の薦め
- 2010/5/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 東 新
昔から「機能しない組織は社会的害悪」と言われます。それでは、組織(企業)を機能させることとはどう言うことでしょうか。市場のニーズに応えて必要なものを提供すること、従業員並びにその家族の生計の支えになること、利益を社会に還元して貢献をすることなど、突き詰めれば企業そのものを存続させること言えます。その為には何よりも(適正な)利益を上げることが必要です。そして、(適正な)利益を上げるために、即ち組織を機能させるためには、更に突き詰めていくとヒトを機能させることだと言えます。如何にそのヒトの持っている能力を引き出し、高めるかが組織を機能させる為に重要であります。然しながら、最近はヒトに対する配慮がおろそかになっていると思えて仕方がありません。適材適所、人材教育、勤労意欲の向上、適正な人事評価、自己研鑽、倫理観の養成、などがどれだけ行なわれているでしょうか。制度はあっても機能しているでしょうか。これは企業の存続にかかわる問題ですから、経営者(企業の幹部)はもっとヒトを機能させる努力をするべきであると思います。
では何をすれば良いのでしょうか。いろいろありますが、意識として重要なことは、相手の立場に立ってものを考えること、相手(上司は部下)のやりやすい環境を整えてやること、そして率先して取組む姿勢を引き出すことでしょう。山本五十六は「やって見せ、言って聞かせ、やらせて見せて、ほめてやらねば人は動かじ」と言って指導しました。ジョン・F・ケネディ(米国第35代大統領)は、
“Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country”
~国が何をしてくれるかではなく、国の為に何が出来るかを考えよう~
と言って自立心と協力を求め、鉄の女サッチャー(元英国首相)も同様に“小さな政府と国民の自立”と言って低迷した英国経済を立ち直らせました。経営学の偉人P.F.ドラッカーは「現代の経営」の中で、“人的資源に対する動機付けは、今日のマネジメントが直面する緊急の中心的課題”と言っております。組織を機能させるには色々な考え方や方法がありますが、組織のリーダーは先ず己に厳しく模範を示す姿勢がなくてはなりません。そして、働きやすい環境作りをする為に、仕事の前後、人間関係の上下、取引の左右をコーディネート(調整)する能力をもつことが求められます。
私はこのように、組織の中でヒトを機能させることを『人事ニアリング』と名付けました。「人事」+「エンジニアリング」、機能的に人を活かすマネジメントをすることです。ヒトの能力を引き出して組織を活性化する為の概念です。組織のリーダーは、より多くのヒトと接して思いを述べ、相手の意見を聞き、そして責任をもって引っ張っていく努力を絶え間なくする「人事ニア」でなければなりません。特に経営者(企業の幹部)は、己に厳しく、ヒトを見る目を養い、機能させる力を持った、「名伯楽」になる努力を続けて欲しいと思っております。
この『人事ニアリング』の内容は研究中ですが、纏まりましたら別の機会にお話したいと思います。
注)『人事ニアリング』は、著者の商標登録です。