中小企業の経営者は、環境経営システムを構築しよう。
- 2010/6/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 松永 研一郎
製造業における中小企業が生き残るためには他社と異なる特色を持つことが重要であり、品質・納期・価格・環境等が管理されていると発注先や顧客の評価が違います。管理とは「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Action)」のサイクルを回すことです。PDCAサイクルを野球で例えるなら、シーズン前に3割打つという目標を決めたらば、前年度の結果を分析し、今年に強化することの計画をたてます。計画を実行しますが、実際に三振した場合、計画通りに出来たのか、計画が不十分だったのかを分析して、次の打席に役立てるように行動することです。経営にはいろんな要因がからむために、PDCAサイクルは多岐にわたりますが、数値を活用すれば努力の効果が目に見えます。
手始めに環境に限って環境経営システムを構築してPDCAサイクルを回してみてはどうでしょうか。環境経営システムの中には、電力、ガソリンなどを減らす省エネルギーや廃棄物の排出量を削減して資材の購入を少なくするコストダウンの効果があります。
地球温暖化はこのまま進むと海面上昇、生物種の絶滅、感染症のリスク、異常気象や食糧危機などを招く恐れがあると言われています。自社の電力やガソリンなどを減らせば二酸化炭素排出量削減にも貢献することになり、企業の社会貢献にもつながります。
中小企業がPDCAサイクルを回して環境方針や環境目標を全従業員の共通認識として効果をあげた事例は多くあります。それにより全員一丸となって問題点を共有した経営管理が出来、省エネや歩留向上の効果だけでなく、発注先からの信用が高まったと聞いています。環境経営システムの運用が出来るようになれば、目標の対象をさらに広げて本来業務の経営管理システムにしていくことはたいして難しくありません。
環境経営システムにはISO14001、エコアクション21、エコステージなどがありますが、取引上の制約がなければ中小企業が取り組みやすいように環境省がガイドラインを取りまとめたエコアクション21がよいと考えられます。このガイドラインの手順に沿って要求事項を満たしていけばシステム構築は可能ですが、専門家のコンサルティングを受けた方が効率的です。このシステム構築のために川崎市中小企業サポートセンターからの専門家派遣による補助制度を活用することも出来ます。
このシステムを構築後にエコアクション21事務局に審査を申し込んで認証登録されれば、①金融機関からの低金利融資、②公共機関や大手企業の入札資格取得、③廃棄物処理業者などの優良事業者表彰制度の条件取得などの特典もあります。この認証登録審査費用や登録料を補助している自治体もあります。
中小企業の経営者の皆様、ひとりで悩むのは止めて全員で頑張るために環境経営システムの構築から始めてはいかがでしょうか。