6月18日閣議決定「中小企業憲章」はどうなった? その行方を見守ろう
- 2010/9/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 安東寿夫
政府はさる6月18日、むこう10年間の平均で名目3%の経済成長を目指す「新成長戦略」を閣議決定し、直ちに発表したので、翌19日の各紙は、ほぼ1ページを割いてこの「新成長戦略」の詳細を大々的に報じました。
ところが実は、同18日の閣議では、中小企業庁がここ数年来、中小企業家同友会全国協議会などからの強い憲章制定の要望を容れ、学識者による内容検討の研究会合なども重ねて練り上げてきた「中小企業憲章」も、閣議決定されたのでした。だが翌日の新聞各紙が大々的に1頁がかりで詳報したのは「新成長戦略」だけ。私が調べた限り各紙で「中小企業憲章」を報道したところはなく、その後もメディアは一向に「中小企業憲章」につき報じていません。だから、肝心の中小企業の皆さんも、閣議決定された「中小企業憲章」のことなど、何も知らない人が大半のようです。誠に奇妙なことです。
インターネットをやっている方は、中小企業庁→中小企業憲章、をぜひ検索してみて下さい。憲章の全文始め、制定までの事前研究会の討議内容など、その全貌がつかめます。本憲章は、中小企業は日本経済を牽引する力で有り、社会の主役であると位置付け、現在わが国が直面している、世界的不況、環境・エネルギー制約、少子高齢化などによる各種の停滞を乗り切るためには、中小企業がその力と才能を発揮して、疲弊した地方経済を活気つけ、同時にアジアなどの新興国の成長をも取り込み、日本の新しい未来を切り開く活動が不可欠、として、従来にも増して中小企業の役割を重要視しているのです。
そんなことはいつもの政府のお題目さ、と言ってしまえばそれまでの事ですが、今度の「憲章」はかなり具体的です。まず「1.基本理念」を謳った上で、今後、政府が中小企業政策に取り組む際の「2.基本原則」を述べ、最後の「3.行動指針」により政府が今後、各官庁が縦割りを排し、横断的に協力しながら、具体的に進めて行くべき八本の柱を掲げています。例えばその内、4)中小企業の海外展開を支援する、の項では、アジア新興国の勃興の中、少子高齢社会で頭打ちする内需頭打ちの打開策の一つとして、中小企業の販売・製造の海外進出を従来に増して強化すべき、と宣言しています。中小企業の未来を決しかねない重要政策を種々盛ったこの「憲章」を、政府や行政官庁が、実際、どう具体的に施策化するか、中小企業者は鋭い選挙民の目で行方を見守っていく必要があります。