「金融機関への決算説明機会の活用とそのポイント」

中小企業診断士 大西俊太

3月が決算月の会社も多いと思いますが、金融機関への決算説明は行っていますか? それとも決算書を提出するだけですか? どうせならこの機会を前向きに活用してみてはいかがでしょう。そこで、決算説明の意義とポイントについて考えてみたいと思います。
まず、金融機関の立場からすれば、きちんと決算説明をしてくれる会社はありがたい存在です。逆に決算書提出が遅れていたりすると、決算の内容にかかわらず問題ある取引先とみられます。金融機関は融資先企業の決算データをもとに、毎年「債務者区分」の見直しを行いますが、きちんとした十分な説明があればこれがスムーズに完了できるからです。
また、会社側としても決算説明は金融機関に自社をPRできる良い機会と考えられます。事業内容や業況を良く理解してもらうことで、取引先の紹介など営業協力を得られることもあるでしょう。また、たとえ業績が悪かったとしても、今後の計画も含めて良く説明をしておくことで、対応が必要以上に厳しくなることを防ぐ効果も期待できます。
では次に、決算説明を行う際の3つのポイントについてお話しします。いずれも、「金融機関が気にする知りたい点をもれなく説明し、安心してもらう」ことが重要です。
第一に、数字の背景・要因について前期との比較で具体的に説明を行うことです。例えば、「具体的にどの取引先やどの商品、どの事業でなぜ売上高が増加・減少したのか。減益となった主な要因としてどのようなコストが増加したのか。」などです。主要な販売先別売上高や店舗別、事業別の売上高内訳を比較できるよう2期分用意するのも良いでしょう。
費用についても同様に前期決算と比較して説明することがポイントです。またこの際に、期初に予算計画を提出していたのであれば、それとの比較も説明すればベストです。
第二に、貸借対照表についても説明することです。通常、損益計算書については会社側も当然良く説明するものですが、金融機関は貸借対照表にも注目します。こちらも、前期比で増減の大きい科目を中心にその背景・要因を具体的に説明することがポイントです。
資産では、特に売上債権や棚卸資産の増加に金融機関は敏感です。売上の増加以上にこれらが増加していると、粉飾や不良債権・不良在庫の発生が疑われるからです。従って、増加の要因を分析しておき、具体的に説明します。例えば、売上債権の増加であれば、「期末月の売上が前期と比べてかなり増加した」、「決算期末日が休日だったので決済が翌期にずれた」などです。
第三に、当期の計画も併せて説明しておくことです。特に、赤字など決算内容が良くなかった場合にはこの点はきわめて重要です。「今回決算はこのような理由で売上減少を余儀なくされたが、今年度はこの事業、この製品で売上回復を図る。そのための具体策として・・・。また、コスト削減策として・・・。その結果、・・・・」という説明ができれば、金融機関の理解も得やすくなります。
その際に、売上増加策よりもコスト削減策の方が、より信用されやすいと言えます。なぜなら、金融機関は返済能力に直接つながる利益確保を売上拡大より重視すること、また、コスト削減策は実行さえすれば売上拡大策より確実性が高いこと、がその理由です。
以上のように、決算説明の機会を積極的に活用することで金融機関との関係も良好に保つことができ、自社にとってもメリットとなるでしょう。

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