中小企業金融円滑化法、来年3月末終了にあって

中小企業診断士 牧村 博一

2度にわたり延長されてきた中小企業金融円滑化法(以下、金融円滑化法)ですが、いよいよ来年3月末をもって終了することがほぼ確実となっています。既に金融庁、内閣府、中小企業庁は、前回の平成24年3月末から1年間の再延長を最終延長と位置付け、本年4月20日に「政策パッケージ」を公表するなど「出口戦略」を推し進めようとしています。地方銀行をはじめとする金融機関も、金融庁の指導のもと既に返済猶予を受けている企業に向けたヒアリングなどの対応を始めつつあるとの情報もあります。
この金融円滑化法は、中小企業などが希望すれば、金融機関は一定期間返済を猶予する(努力義務)ことを規定しています。この返済条件の緩和等を受けた企業は、30万社とも40万社とも言われています。マスコミなどは来年3月の金融円滑化法の終了は、倒産件数が急増する懸念あるなど、現在返済猶予を受けている中小企業に及ぼす影響は大きいと盛んに煽っています。このような状況下で、資金繰りをはじめとして今後の事業展開をどうしたら良いか分からないなど不安を感じている中小企業経営者も多いと思います。
本年4月に発表された「政策パッケージ」の内容は、①金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮、②企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化、③その他経営改善、事業再生支援の環境整備 の3点です。
説明が前後して恐縮ですが、②については、中小企業再生支援協議会で過去10年以上の実績とほぼ同じ3,000社の事業再生に取り組むことをノルマとしているとのことです。しかしながら、返済条件の緩和等を受けた企業は、前述のとおり30万~40万社と言われていますので、中小企業再生支援協議会の事業再生などの支援を受けられる企業は、1%にも満たない数であり、中小企業の中でも一定規模以上の中堅企業だけが対象となると推察されています。となれば、ほとんどの企業が、①による取引金融機関の出口戦略ヒアリングを受け、具体的な支援の方針や取組みについてのコンサルティングを受けることになります。ただ、金融機関担当者は業務が多忙を極めており、返済猶予を受けている企業も多いことから、全ての企業の経営改善に関与することは不可能と思われます。そこで金融庁や中小企業庁は、外部専門家との連携強化を推進しており、特に中小企業と密接に関与している中小企業診断士や公認会計士・税理士が期待されています。勿論、我々中小企業診断士は、金融円滑法化法終了の出口戦略に欠かせない「経営改善計画書」の作成支援をはじめ中小企業の皆様のお役に立てるよう全力で任にあたらせていただきます。
ただし、金融庁からの指針にもありますように、「まずは、何よりも債務者自身である中小企業の経営者自らが、自社の経営課題を正確かつ充分に認識し、この経営課題に対して真正面から向き合い、経営改善、事業再生等に意欲を持って、主体的に取り組んでいく姿勢」が重要であることは間違いありません。経営改善・事業再生には、経営者の再建意欲と真摯な態度こそが最も重要な要素です。
長期デフレ経済の反転も見えず、震災復興事業も思ったほど進んでいない、さらに中国との関係悪化と、景気回復が見えない中、来年3月に到来する金融円滑化法の終了は中小企業経営者の皆様にとって大きな試練であることは間違いありません。しかしながらこの機を自社の生き残りを真剣に考え、将来に向けての方向性をしっかりと決断するよい機会であると、前向きにとらえていただきたいと切に願っております。

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