再生可能エネルギーによる発電は原子力発電の代わりになるか

松井利夫

 原子力発電の安全に対する信頼性は東京電力福島原子力発電所の想定外?の事故により根底から覆された。現在、日本にある54基の原子力発電所の内、稼働しているのは大飯原子力発電所の1基のみであり、廃止された福島の4基を除いた49基は点検のため稼働していない。地域住民の反発が強いため再稼働が難しい。このまま推移したのでは必要な電力を賄えない。このため、今まで総発電量の約30%の電力量を賄っていた原子力発電に代わる新たな発電方式として再生可能エネルギーによる発電に期待が寄せられている。

再生可能エネルギーによる発電量の総量は2009年度で全発電量の9%に過ぎない。国のエネルギー基本計画では、この比率を2030年までに21%まで引き上げる計画であるが、原子力発電への依存度を下げるためには、再生可能エネルギーの活用を早急に拡大する必要がある。このため、国は再生可能エネルギーの固定価格買取制度を7月1日から施行した。このことにより再生可能エネルギーの拡大に弾みがつくことは間違いないが、どのくらい拡大可能なのかが問題である。再生可能エネルギーのなかで量的に最も期待できるのは太陽光と風力であると言われている。

環境省は平成22年度に再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査を行って利用可能なエネルギー資源量を推計した。その結果は、固定価格買取制度導入により年間の発電量はわが国の年間発電量にほぼ匹敵するポテンシャルがあるという結果がでた。しかし、これらは単に可能性を示したものに過ぎず実際に電力として利用出来るかどうかは別問題である。そこで、太陽光発電と風力発電について実現の可能性と課題を探ってみた。

1)太陽光発電の可能性と課題
太陽光発電の原理は、半導体の持つ光電効果の現象を利用して、光のエネルギーを直接電気に変換するものである。この光電変換を行う装置が太陽電池であり、光のエネルギーをどれだけ電気に変換できるかを示す指標が「変換効率」である。太陽光のエネルギーは、快晴時の昼間、水平面1平方メートル当たりおよそ1キロワットであるから、この時100ワット発電する太陽電池の発電効率は10%と言うことになる。現在の最高変換効率は43.5%と聞いている。太陽光発電の発電コストが高いことが最大のデメリットである。太陽光発電が普及するカギは太陽電池の変換効率向上と製造コストの低減に掛かっている。その打開策として太陽電池の技術開発と、大規模太陽光発電所(メガソーラー)に期待が掛かっている。
2)風力発電の可能性と課題
風力発電は、太陽光発電などに比べて大きな発電量が期待できる。発電コストも安いことから、地球温暖化対策の切り札として世界各国で積極的に導入されている。風力発電は、風を受けた風車が回転し、この回転を増速機で加速し発電機に伝えて発電する仕組みである。風車を回す風のエネルギーは、風速の3乗に比例し受風面積に比例する。従って、風が強いほど、また風車が大型化するほど大きな出力が得られるが、強すぎる場合は運転をストップさせる必要がある。日本では、風の強い地域は山岳地帯や海岸線などに限られている。こうした地域は電力使用量の多い都市部から遠いため送電線の施設が必要となるなど問題が多い。このため、洋上風力発電が注目されている。海上は陸上に比べて一般に風速が強く、風向きの変動が少ないことや大型風車の設置が容易なことなどメリットもある一方、建設費が高いことが最大の問題であり、コスト低減が新たな課題である。

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