問題解決のステップを学び人が成長し企業が変わる
- 2013/3/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 吉澤正一
経済活動に取り組む上で常にいろいろな壁に突き当たる。経済活動に限らず政治・社会活動、教育・文化・スポーツ活動などあらゆる場面で望ましいと考えるレベル或いはあるべき姿、ありたい姿との乖離・ギャップはどこにも常にある。
現状とあるべき姿の差がギャップであり許容できる範囲であれば多くの場合はいい意味で成り行き任せが通常である。しかしながら、このギャップは、ある一定のレベルを超えれば解決しなければならない問題として捉えられる。
問題の幾つかは自然の成り行きで時間と共に解決に向かうことがある一方、必ず人間が一定のステップを踏まなければ解決に向かわない事柄も多い。時間と共に自然に好転する問題解決の代表例は自然治癒力による怪我などからの回復がある。片や、一定のステップを踏まなければ解決に向かわない事柄は人間社会の中で無限にある。本稿のテーマはこの無限にある問題について解決への取組みに共通するステップを整理し、いろいろなところで応用できる思考パターンを共有することにある。
問題解決のステップという表題であるが、かわさき診断士クラブの会員として寄稿しているので、ここでは企業経営活動の中の問題解決について考えてみたい。多くの企業で、「御社の現状の問題は何ですか?」と経営者に聞けばおおよそ「売上げが下がってきて困っています」という答えが予想される。この経営上の困難を打開し成長軌道に乗せる為に経営者や企業内の人たち或いは企業経営支援者はどのような取組みをすべきであろうか。
まず、経営者が困らない売上高の数値があるはずであり、それを目標値と捉える。現状の売上高と目標数値との差を問題と捉える。企業経営においてはこれと同様に目標と現状が合わない各種の多様な問題があるが、全てのことに経営資源を振り向けることはできないので、経営に影響が大きいことに重点化し経営資源を投入するべきである。企業経営の最終目標は企業永続と考えれば、重点問題は自ずと見えてくる。企業永続を英語で言えばゴーイングコンサーンというが、ゴーイングコンサーンを脅かす恐れがあることについて重点問題すなわち問題点として捉える。
この問題点について最初の取組みは現状把握である。現状は外部環境と内部環境の過去からの流れの帰結としてある。現状把握のために外部環境と内部環境の分析は必須である。併せて、あるべき姿や目標未達原因の分析研究が必ず求められる。これらの分析研究の中に問題点の真の原因がある。
二、三例を上げると、売上げが下がっていると分かっていても何ら手を打たない成行き経営体質の場合もあれば、親会社頼りの下請け経営体質の場合もあれば、社員の力を引き出せていない超ワンマン経営の企業もある。問題の認識を起点として現状把握・現状分析それに続く原因分析研究による取組課題の抽出が必要である。
取組課題は企業の強みから考えられる課題すなわちより強くするための施策は課題の一つである。また、企業の弱みを是正し克服することも課題である。取組課題についても優先順位を付け重点化することが重要となる。重点取組課題を設定し課題解決策を検討し、それに基づき実行計画を立て進捗管理を行う。
まとめると①現状・問題把握-②分析研究-③課題設定-④課題解決策検討・実行計画策定というステップになる。この中で一貫して考えておきたいことは物事を「数値を見て、数値で考え、数値で判断する」ことである。
以上、全ての問題について共通する問題解決のステップを示した。あらゆることについて意識が変われば人間は行動が変わる。行動が習慣になり習慣になれば、人格が変わり運命が変わる。