速やかならんことを欲するなかれ
- 2013/4/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 足立 秀夫
中小企業診断士の基本的ミッションは経営者の皆様からの相談に乗ることです。初めてお会いしてすぐに経営トップの方とよい人間関係を形成したいようなとき、景気や世相の話もありますが、中国古典からの名言なども話のテーマとなります。人の上に立つ仕事をする人々は、江戸や明治の昔から四書五経などといった古典を読んでいたからでしょうか。論語や易経を読むと、2千年以上の昔も現在も人間の本質はそう変わっていないのだなと思うことがよくあります。
論語に、「子の曰わく、速かならんことを欲するなかれ。小利を見ることなかれ。速かならんと欲すれば則ち達せず。小利を見れば則ち大事成らず。」とあります(子路篇17)。その意味はおおよそ次のようなものです。
早く成果をあげたいと思わないこと。目先の小利に気をとられないこと。早く成果を上げたいとあせると息切れを起こすし、小利に目がくらむと大きな仕事を成し遂げることはできない。
これは地方の長官に赴任しようとする弟子から政治の心構えを尋ねられて答えたものですが、孔子は2つの重要なポイントをあげています。
第一は、「速かならんことを欲するなかれ」。あせるな。腰を据えて、じっくり仕事に取り組めというのです。言い換えれば「長期的な視野を持て」ということにもなります。
第二は、「小利を見ることなかれ」。目先の小さな利益に心を惑わされてはならない。さらに言えば「大局的な判断をしろ」ということになるでしょう。
孔子は、政治に取り組むうえでの大事なポイントとしてこの2つを上げましたが、現在にも当てはまる内容ですね。また、経営の世界でこそ、このような心構えが特に大切ではないかと思います。
ビジネスの場では、新任のマネージャーが仕事に取り組む心構えとしても役立てていただきたいものです。前任者がやってきたことを何でも変えたくなることがあるかもしれませんが、現場をよく理解したうえで、あせって失敗しないよう大局的な判断で取り組んでください。