中小企業の三大疾病
- 2013/5/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 座間 正信
中小企業には三大疾病があるといわれています。
一つ目は人材教育です。中小企業では時間とお金に余裕がないためになかなか人材教育に費やす時間・お金をねん出できないというのが現状でしょう。それ以外の要因としては、「どのように従業員を教育してよいかがわからない」という場合があります。そのため、従業員教育については何もしていない、いいところ現場でのOJTが精一杯という企業が大多数なのです。少し余裕がある会社でも、従業員教育は外部機関に丸投げしてしまい、結局効果が上がらないという場合も多く見かけます。
そもそもどのような人材に育って欲しいかという方針がないために人材が育たないのです。結果として社長の右腕になる社員が育たず、社長が何にでも手を出すため常に忙しいという会社を多く見て来ました。
一方、成長している企業は人の教育をキチッとやります。お金や時間がない中で何とか工面して教育に資源を投入するのです。「人材育成はつまるところ社長の執念」と言う人がいますが、社長に人材育成の執念があるかないかで会社の成長に大きく影響をおよぼすのです。
二つ目は需給管理です。これは大企業でも難しいのですが、特に中小企業では「将来どれくらいの需要を見込めるので、その需要をまかなうためにどれくらいの生産能力を持つべき」といったような受給管理が非常に不得手です。なんとなくお得意先(親企業)の言うままに、忙しい時には早朝から深夜までの作業や休日出勤でこなし、暇なときは工場の草むしりを従業員にさせているような会社があります。ひどいところになると、朝にFAXで注文が来てから当日の仕事の割り当てをしている企業もありました。
これでは工場の稼働率が安定せず、利益を上げることなど不可能となります。受給管理をするということは専任の管理者をおき、景気動向や業界状況などを勘案しながら対策を打つという管理が必要になります。多くの中小企業ではそのような管理者を置くことを「ムダ」と考えているようです。しかし、管理者を置くコストと受給管理不備により掛かるコスト、あるいは失う売上を秤にかけると、ほとんどの場合に管理者を置くコストのほうが相当に安くつくのです。
三つ目は個別原価管理です。「この商品を一個売るといくら儲かる」といった管理ができていないところがほとんどです。個別原価管理ができていないところは利益管理もできていません。つまり、どの商品をどれくらいのコストで製造して、どれくらいの価格で販売すれば目標利益に到達できるといった管理ができていないのです。当然、利益管理ができていないので最終的に目標利益に到達できるかどうかはふたを開けてみなければわからないといった事になるのです。あるいは、そもそも目標利益という考え方すらない会社がほとんどかもしれません。
原価管理は難しく考える必要はありません。1個の商品を製造するのにかかるのは、労務費、外注費、原材料費です。これに工場経費を割り当てれば1個あたりの製造原価が出るのですが、経費は、全体の製造時間に対して1個の商品を製造するのにかかる時間を計算して割り当てるだけでもある程度の目安がつきます。原価管理はある程度アバウトでいいのです。大事なのは商品ごとの1個あたりの原価を計算して並べてみた時にどうなるか、ということです。最も利益率の高い商品はどれか、最も売上高に貢献しているのはどれか、といったことがわかるだけでどの商品に力を入れていけばよいかがわかるのです。
これらが中小企業の三大疾病といわれているのはほとんどの中小企業でできていないことだからです。逆に言えば、これらの管理をきちんとできれば企業が大きく成長する可能性があるということです。