知的資産経営のすすめ
- 2013/6/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 河野 隆治
今、企業は厳しい経済環境にあっていかに競争力を強化していくのかが問われています。
特に中小企業においては経営資源の最適配分が自社の実勢を左右するといっても過言ではありません。そのために有形資産だけではなく、見えざる資産にもフォーカスを当てその把握、活用を通じて企業価値の向上につなげていくことが不況下の経営には重要なのです。
知的資産とは
「従来のバランスシートに記載されている資産以外の無形の資産」であり、企業における競争力の源泉です。人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク等、財務諸表には表れてこない目に見えにくい「経営資源の総称」をさします。知的資産とは企業の本当の価値・強みであり、企業競争力の源泉です。
どのような会社でも何らかの知的資産を保有しているものです。ただ把握できていないだけなのです。把握しづらいものだからこそ競合会社にとっても模倣しづらい差別化のポイントと考えることができます。
知的資産経営とは
自社の知的資産(=強み)をしっかりと把握し、活用することで業績の向上や、会社の価値向上に結びつけることが「知的資産経営」なのです。
企業が勝ち残っていくためには、差別化による競争優位の源泉を確保することが必要です。差別化を図る手段は色々ありますが、 特に大きなコストをかけなくても身の回りにある「知的資産(見えざる資産)」を活用することによって、他社との差別化を継続的に実現することができ、ひいては経営の質や企業価値を高めることができるのです。
知的資産は大きく3つに分類されます。
○人的財産(従業員が退職時に一緒に持ち出す知的資産)
例)イノベーション能力、想像力、ノウハウ、経験、学習能力、モチベーション等
○構造資産(従業員の退職時に企業内に残留する知的資産)
例)組織の柔軟性、データベース、文化、システム、手続き、文書サービス等
○関係資産(企業の対外的関係に付属した知的資産)
例)イメージ、顧客ロイヤリティ、顧客満足度、金融機関への交渉力等
知的資産経営の効果
○限られた経営資源を最適に活用することができる。また、経営者自らが、自社の強みに
ついて新たな「気づき」を得るきっかけになる。
○得意先、顧客からの信用度がたかまる ○金融機関等からの自社に対する理解が深まる。
○従業員の意識や仕事に対するモチベーション、一体感が高まる。
知的資産の見える化
知的資産は財務諸表には表れません。そのために知的資産経営報告書という形で自社の強みの棚卸・体系的な整理をし、積極的に自社の強みをアピールすることが大切です。
ぜひ知的資産経営に取り組んでみてください。