行政も活用して戦略の再考を

寒河江 正昭

1.経済の動向

現在、政治・経済の最大の関心は「アベノミクス」の行方である。所謂「三本の矢」で日本経済の再生(デフレ脱却)を目指す政策である。第一の矢は、日銀による大胆な金融緩和(リフレ政策)である。第二の矢は、政府による機動的な財政出動(需要喚起)である。これは市場(資産・金融)に熱狂的な反応を引き起した。五月末、政府はこの流れに乗り日本経済の復活に一番大事な第三の矢を発表した。すなわち、待望の成長戦略(規制改革で民間活力の促進)である。しかし、これらの施策は市場の期待を裏切る(内容が具体性や実現性に乏しい)と評価された。このため、市場は反動的に転回して大混乱(株価の暴落に続く乱高下など)に陥っている。この推移から、「アベノミクス」は資産市場を活性化したが、肝心の実体経済(生産・消費)を賦活するに至らない現況かと見られる。中小企業の経営者は、この激動する環境で「自社は何をすれば良いのか解らない情況」に苛立ちを覚えながら、金利動向(借入金)や為替動向(貿易財)に注目して経営しておられると思われます。

2.自社の位置

このように変動著しい日本経済の情勢下では、「自社の進路をどのように見定めるのか」が大きな課題と認識されます。先ず考えるべきは、「自社の足元を見つめ直すこと」です。すなわち、自社は、何を生産しているのか、誰に販売しているのか、利益が上がって伸張している事業なのかなどである。次に考えるべきは、「自社の所属する業界を俯瞰すること」です。これは競争相手が誰か、仕入先や販売先の動きはどうか、思わぬ業者の参入や新しい製品の登場で自社が打撃を受けないかなどである。

自社が業界のどの位置にいるのか(自社の立地)を確認することが、戦略再考の前提となります。

3.戦略の再考

経営戦略とは、企業が市場(財・サービス)で組織活動するため必須となる長期的な基本設計図である。言わば「企業経営の軸足」である。当然ながら業績を向上できない経営戦略は無意味である。

何故ならば、企業の多様な営業努力に対してプラスαをもたらすのが経営戦略の本質だからである。

企業の利益創出の条件は、①顧客に商品を選択して貰うこと、②企業が売買差益を獲得できることである。経営戦略は、素朴に言えばこれら二つの要件を実現するための基本構想の論理なのである。

4.構築の要領

このプラスαを導出するための戦略体系は、四つの戦略次元が一つの活動成果に帰結するシナリオとして構成される。戦略は高い順から①ドメイン(事業領域)、②ビジネス・システム(収益構造)、③オペレーション(業務運営)、④マネジメント(組織管理)で組み立てられ、これらの因果連鎖が⑤パフォーマンス(財務成績)を演出する。戦略にビジョン(将来像)が不可欠なのは論を俟たない。

5.行政の活用

経営戦略の策定では手順がきわめて重要である。実務的には「着眼大局、着手小局」が肝要となる。つまり、構築の要領を逆順で取組むのである。しかしながら、この戦略をすべて自力で完成するのは容易ではないかも知れない。この場合は、行政が提供する各種の支援を活用するのが賢明と思われる。

具体的には、「金融円滑化対策の総合パッケージ」や「中小企業経営強化支援法」に基づく認定支援機関(金融機関、税理士、中小企業診断士など)に助力を要請して、専門家の職能(事業再生計画や経営改善計画の作成)を存分に利用することである。身近なところでは、川崎市産業振興財団による「企業経営の窓口相談」(私達のクラブが担当)を訪問するのが最適であると考えております。

以上

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