中小企業診断士 井川 和美
2013年度中小企業白書によると、自社ホームページの開設状況は、大企業が95.6%、中規模企業が80.4%であるのに対し、小規模事業者では約半分の46.3%に留まっています。規模が小さくなるほど開設率は低くなっていますが、現在ホームページを開設している小規模事業者の約4割が販売数が増加したと回答しているのに対し、未開設の事業者で販売数が増加したとしたのは1割以下となっており、ホームページの上手な活用が集客力向上に寄与していることが伺えます。
一方で、約6割の事業者においてホームページを開設したものの思ったような効果が得られていないのはなぜなのでしょうか。データによると、ホームページの更新頻度が年1回以下という事業者が約5割、アクセス解析を行っている事業者は4割にも達していない状況です。ホームページを作っただけでは望むような効果を得ることは期待できません。有効に活用するためには、ホームページにミッションを与え、見てもらいたい人に見つけてもらい、興味を持ってもらい、アクションを起こしてもらうための工夫が必要なのです。
ホームページの役割は、①商品・サービスのPR、②会社紹介、③問合せの窓口、④顧客情報の獲得、⑤店舗の案内、⑥商品・サービスの販売・予約、⑦社員採用など様々ですが、ホームページを成功させる第1歩はこの役割を明確にすることです。「誰に見てもらいたいのか」「何を伝えたいのか」を具体的に検討することがとても大切です。
「誰に見てもらいたいか」が決まったら、見てもらいたい相手がどんなキーワードで検索するのかを考え、検索エンジンの上位に表示されるための対策(SEO対策)が必要です。その他には、SNS(Facebook、Twitterなど)やリスティング広告などを利用して自社のホームページに呼び込むことも有効です。
訪問者の目的の情報が見つけにくかったり、内容が希薄だとすぐに離れて行ってしまいます。「伝えたいこと」を伝えるため、デザイン・配置(見やすさ、わかりやすさ)などに工夫を凝らすことも重要でしょう。
そして実際に、どんな人が、どのくらい、どのようにして、何のためにホームページを訪れ、最終的に関心を満たすことができたのか、これらを定期的に分析し(アクセス解析)、その結果を見て少しずつ対策を考えていきます。これらを何度も繰り返すことで、ホームページは経営者の右腕となる「働き者」に育っていくのです。
このようにホームページの活用にはある程度の「手間」が必要になります。さらに、問い合わせや販売が増えた場合には、これらへの迅速な対応が求められます。
そこで、ホームページの強化と同時に社内業務の見直しを行うと効果的です。
モバイルによる迅速な情報活用、定型業務のIT化、アウトソーシングやアルバイトへのシフトなど、生産性や効率性を高めていくと顧客満足度も高まり、好循環が生まれます。
情報技術(IT)は近年ますます進歩しています。タブレット端末、スマートフォン等の新しい情報機器やクラウド・コンピューティング等の新しい情報サービスが次々と生まれており、低コストでのIT活用が可能となっています。
自社の戦略を実現する手段として、ホームページやITツールの有効活用を検討、あるいは見直しされてみてはいかがでしょうか。