「アベノミクスと中小企業」

 

 

中小企業診断士 山田 昭彦

  2013年6月から川崎市や大田区の京浜工業地帯の中堅メーカー様を訪ね歩いて、景気動向の調査を行っております。多くの企業で社長様や営業部長様にお会いし、1時間くらい業界や会社の話を聞かせていただいています。株価高騰や利率の変動で紙面を賑わせているアベノミクスが経営に影響を及ぼしているかと尋ねると、ほとんどの企業では、まだ影響が下りてきていない、と答えています。

少子高齢化で購買活動が停滞し売上減の運送業、レジャー産業。サムソンやホンハイなどの海外勢に日本のお客様が押された結果、注文が激減した電子部品業界、また携帯電話からスマートフォンに代表される急激なトレンドの変更に振り回されている樹脂成型業界など、中小企業の厳しい実態が浮かんできました。

それでは、みながみな元気がないかというと、そうでもありません。震災復興予算でインフラが整備され、道路、鉄道、水道が敷かれていくと、関係する機器の組み立て産業が活性化されていきます。また、各種の政府補助金の影響で測定器や工作機器に設備投資をして好景気に準備をしている企業もあります。確かに幾つかの企業ではアベノミクスの好影響が見られます。しかし、元気な企業はこうした政策や公的援助のおかげだけでしょうか?

いやいや、受注増で悲鳴を上げているある企業では、自社の独自加工技術を求めて大手企業から案件がどんどん舞い込んでいます。加工機を導入し、社員を雇用し、さらに新たな工場敷地も必要としています。また、試作ビジネスに特化している企業には特急の注文が入り、急がしさが増しています。大手のベテラン技術者を受け入れている設計事務所では、ベテランが抜けた穴を埋められずにいる大手企業から、測定具や治具の設計や試作の依頼がぞくぞくと続いています。また、社内で長年育成してきた技能マイスターの技術を必要とされて忙しい企業もありました。

ユニークな技術を大事に育て、高年齢でも腕の立つ技能者を大事にする企業は元気です。そうした企業の経営者はリーマンショックで売上が多少落ちてもあわてません。日本に適した小回りの利くものづくり、少量多品種短納期での対応力を社員とともに築き、長い目で市場の流れを見て、そして機敏に決断されています。アベノミクスでも日本に合った製造スタイルを国民と一緒に作り上げていってほしいものですし、それは農業やサービス業でも同じではないでしょうか。

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