製造業にとり展示会は意外に重要な顧客開拓手段 

中小企業診断士 福田 和彦

政権交代から1年が過ぎ、それ以前の異常な円高が是正される傾向となりましたが、筆者が主に支援させていただいております中小製造業者からは、いわゆるアベノミクスによる恩恵により経営状況が良くなってきたという話を聞ける機会は多くはありません。

これは様々な原因が複合的に重なっていると思われますが、やはり根本的にはいわゆる下請け型の製造業という経営形態が、ここ20年ほど続いてきた製造業の海外流出という環境変化にさらされ、簡単には立ちいかなくなってきた現実があるのだろうと推測します。

一方で、常に話題をふりまき元気に活動している中小製造業者がいることも事実です。例えば、他社では真似のできない加工法を生み出した企業や、BtoBからBtoCへと経営の軸足を移している企業、さらにはファブレス形態に変身した企業も存在します。

このように時代の変化に機敏に反応し、自らを変革していくことで元気に活動する企業が存在する一方で、多くの中小製造業者は旧来の下請け構造の崩壊による影響を回避することもかなわず、じっと我慢の経営を余儀なくされているのが現状といえます。下請け型企業は顧客企業に大きく依存しているため、ひとたび内外環境の変化により顧客企業が経営方針を変更すると、その変化に取り残される危険にさらされやすく、ようやく変革の必要性を認識した頃にはそれを進めるための余力すら失われていることも多いからです。

ここ数年の中小製造業の新しい動きとして特に気づかされることとして、展示会に出展することで新しい顧客を獲得するという活動が目立ってきたことがあげられます。この動きは、国内における製造業の企業数・生産量が縮小傾向にあることを踏まえ、全く接点のなかった企業からであっても、自社の生産能力を必要としているのであれば積極的に取引に応じるという経営姿勢の変化をもたらしているといえます。

製造業者が多く集まる展示会場を見て回りますと、来客が絶えない展示ブースがある一方で、どうにも客が寄り付かず暇そうなブースもあることに気付かされます。できるだけ効率的に集客に励み、将来の顧客企業の確保を目指すにあたり、以下のような項目に留意したいものです。

u       出展の目的を明確にする。従来の分野で新しい取引先を探したいのか、優れた技術・サービス力の存在を知らしめたいのか、自社の知名度を上げたいのか等によって展示の仕方が変わるはずです。

u       展示会は、『幅広い業種・業態の企業が集まる展示会』と『特定の業種・業態の企業だけが集まる専門性の高い展示会』の2つの類型に大別できます。それぞれで顧客の層が異なるため、展示のアピールポイントを変えていくことが必要です。

u       来場者は展示ブースを見て、自分の役に立ちそうな企業なのか否かを瞬時に判断します。まず目立つ展示になっているか、立ち寄りやすくなる工夫があるか、自社と取引するとどのような役に立つのかを簡潔にアピールすることが重要です。

u       来場者にその場で満足してもらっても、展示会場を出るころには会社の名前を忘れているのが通例です。あとで思い出しやすいような『土産(社名入りの事務用品など)』を用意することも必要です。

u       来場者は、なんらかの取引を始めたいと考えた場合に、当該企業のホームページを確認することが多いです。ホームページの内容が展示ブースから受けた印象とあまりに違うようですと、本当はどの様な会社なのかと疑問を抱いてしまいます。

今は売り上げが伸びず厳しい状況にあっても、一芸に秀でている会社であるならば、それを評価する企業がどこかにいることが考えられます。新規取引先の確保に悩むのであれば、展示会への出展を検討してみてはいかがでしょうか。

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