中小企業診断士 小谷 泰三
- 昨年度の補助金予算の拡大と異変に関心を
アベノミクスでの3本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)を推進するため、民間企業の活性化、経営革新、雇用の創出や海外展開などを支援する補助金が大幅に拡大されるとともに、新たな補助金制度も多く誕生しています。ここではこれらの多くの補助金の紹介は省きます。
中でも、25年度の経済産業省の補正予算額として、消費税値上げに伴う下振れリスク対応の一環として、競争力強化等で5500億円強(うち中小企業対策として3400億円強)と大判振る舞いの予算が組まれました。
「ものづくり・商業・サービス革新事業補助金」に、1400億円(1社1千万円の補助金を得るとして1万4千社程が採択されたことになる)、24年度補正では1007億円が、ものづくり補助金に提供されている。また、新たに「商店街・中心市街地活性化対策」に225億円が計上されました。これは、「まちづくり補助金(ハード事業)」と「にぎわい補助金(ソフト事業)」とに分かれています。後者の「にぎわい補助金」は、補助率が100%と自己負担を必要としないものまで登場しました。
- 補助金とは一般に「返済不要なお金」
補助金は融資と違い、国や地方自治体等からもらえる一般に「返済不要なお金」です。
補助金と類似したものに、助成金というものがあります。この助成金は要件が合えば基本的には申請者に受給されるもの(厚生労働省管轄のものが多い)ですが、補助金では予算枠以上は、条件が合っても受給ができなくなります。したがって、補助金の公募が発表される前から、用意周到な準備を進めておかなければ、公募期間が概ね1か月から2か月程度と短いものが多く、発表があってから取り掛かっても簡単には採択されるものではありません。それでも、ものづくり補助金では40%を超える採択率があったので、この資金が調達できれば、事業の運営に大いに役立つとともに、事業の革新が推進で出来るきっかけになり得るものです。
補助率は補助金の内容により異なりますが、昨今は3分の2以内というのが多くなっています。補助額が一定金額以下と定められたものもあります。自治体関係でも多くの補助金制度が設けられていますが、2分の1以内というのが多いです。しかし、経費を50~70%も下げることは大変です。これを補助金で補うと考えたら、損益分岐点を大幅に下げた効果を生んだと考えることができます。
- 補助金申請をしない企業・関心のない企業
補助金の受給が採択されたということは、国の機関や地方自治体からお墨付きをもらったことになりますので、世間的には信頼を勝ち得た企業や団体ということになります。
一方、補助金をもらうことをためらったり、全く関心を示さない企業や商店街等の団体・組合関係者も多く存在しています。
その理由として、つぎのようなことがあげられるでしょう。
① 補助金の申請手続きが面倒である。
② 補助金をもらった後、フォローアップのための報告が義務付けられる。
③ 倍率が高く、審査に受かるとは思えなく、無駄な作業を行うことになる。
④ 当社には、特に優れた技術がなく、人材もいないので応募の対象外と思っている。
⑤ 団体や組合関係では、自己負担分を出したくない企業もあり申請できない。
しかし、このような消極的な対応では、益々事業の発展を難しくしているといえます。
これからの補助金申請案件には、次の項目で述べる「認定支援機関」の確認書が求められるものが増えています。したがって、これら認定支援機関に支援を求めるか、私ども「かわさき中小企業診断士クラブ」に支援を求め、企業の改善・事業計画の策定・経営革新(①新商品開発・生産、②新役務の開発・提供、③商品の新たな生産・販売方法、④役務の新たな提供方式の導入)の承認獲得などを、事前に進めておくことをお薦めします。
また、補助金申請の経費に、これらの専門家への謝金を入れ込むことができます。
- 認定支援機関とは
昨今、中小企業を巡る経営課題が多様化・複雑化していますので、これら中小企業業の支援を行う支援事業の担い手の多様化・活性化を図るため、平成24年8月30日に「中小企業経営強化力支援法」が施行され、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。
認定制度は、税務、金融および企業財務に強い専門知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業診断士等の支援機関を、経営革新等支援機関として認定することにより、中小企業に対し専門性の高い支援を行うために整備された新しい支援機関です。
①自社経営を「見える化」したい。②事業計画を作りたい。③取引先を増やしたい、販売を拡大したい。④専門的課題を解決したい。⑤金融機関と良好な関係を作りたい。など中小企業が抱えている悩みの相談や解決等に活用してください。
- 補助金を上手に獲得できるようにするには
今まで述べてきたことからわかるように、補助金を上手に獲得するには、まず、①経営革新の承認を取っておくこと。②認定支援機関や「かわさき中小企業診断士クラブ」の経営支援を受けること。③行政機関や金融機関との円滑なコミュニケーションが取れていること。④公募前に事前に目的とする補助金申請に向けての準備をしておくこと。⑤労務管理や中小企業会計など法令順守の経営を行っていること等があげられます。
さらに、申請書作成の段階では、①電子ファイルの提出が求められるケースが増えていますので、最低WORDやEXCELでの記述がされていること。②第三者に理解できる文章や図表・工程表を活用して説明されていること。③申請書での質問や記載要件に的確に答えていること。④別紙による添付資料を必ずつけてアッピールすること。
財政は逼迫しており、補助金の予算も年々厳しくなってくるでしょう。補助金獲得の準備は「今です」。完