中小企業診断士 福島一公(ふくしま かずまさ)
2月3日に景気下支えのための緊急経済対策を織り込んだ、平成26年度補正予算が成立しました。また、追って平成27年度予算案も国会で審議が行われております。ここ数年景気浮揚のための施策が織り込まれており、中小企業の経営を支援するための各種の補助金・助成金が交付される見込みとなっています。本稿では、その補助金・助成金を申請するうえでの留意点につき述べてみたいと思います。
当然と言えば当然ですが、補助金・助成金に応募するためにはまず、募集要項の隅から隅まで熟読する必要があります。特に募集要項の終りの方に募集における重要な注意事項が書いてあったりしますので、要注意です。たとえば、「このような場合は対象外になります」というようなことや、「このようなものが必要です」などといった、一般的ではない特殊事情についての備考があったりするからです。
次に、募集される補助金・助成金の目的、対象が何かということを理解して応募する必要があります。例えば「ものづくり・商業・サービス革新補助金」では、キーワードとして「国内外のニーズに対応」、「新事業を創出」、「革新的な」、「設備投資」、「サービス・試作品」の「開発」という言葉があります。これらの条件を全て満たす必要があります。特に重要なのは「革新的な」という点です。中小企業のイノベーションを促したいという政策目的がそこにあるからです。したがって、取り組む事業テーマについては、それらを考慮する必要があります。
そして、そのテーマが自社にとって地に足がついたものとなっている必要があります。すなわち、自社の経営資源を見つめ直し、自社の強みと経営を取り巻くチャンス(機会)をうまくとらえたものである必要があります。自社の持たないものを外部に依存する部分が多い場合、実現可能性という面で説得力が低くなるからです。
「国内外のニーズに対応」という点も重要です。新しいことだからといって、ニーズがあまりなさそうなテーマについては取り上げられにくくなります。例えば既存事業において顧客からこのようなことができないかと常々言われていることに対応したいとか、市場ではこのようなものが売れているが、当社はもっと性能や品質が良く、より多くのシェアを獲得できる見込みがあるなどといった説得力のあるものが必要です。具体的な販売先や納入先が述べられていれば、より説得力が強くなります。
さらに、取り組もうとするテーマが自社の事業にとってどの程度プラスになるかを、定量的に明示することも重要です。例えば売上が目に見えて向上することが期待できるとか、コストが目に見えて引き下げることができるなどです。金額、伸び率などで的確に明示する必要があります。つまり費用対効果が目に見えるようにするわけです。
一方、事業の遂行にあたっては、組織的な進め方を具体的に説明する必要があります。取り組むテーマには課題が必ずあるはずですから、その課題の内容を図などで分かりやすく表し、最終的に目指すものは何かということを表現します。さらに誰が、何を、いつまでに、どのように実施するかを組織図やチャートなどで説明する必要があります。
そして、最後に上記のことが十分に表現できているかどうかを、「審査項目」に照らし合わせてチェックしてみます。応募する企業は数多くありますので、ライバルを抑えて取り上げてもらうためには、この審査項目すべてを申し分なくクリアする必要があります。すなわち、事業の「革新性」という点でいくら斬新的であっても、必要最低限の要求事項は満たす必要があるということです。
忘れてはいけない点として、助成金、補助金は精算払いとなっており、後払いであるということがあります。したがって、事業の実現可能性をアピールするためには事前に事業遂行のための資金の裏付けが必要です。すなわち、運転資金確保のめどをつけておく必要があります。
なお、業績が悪いからといって、最初から門残払いとなることはありませんので、是非チャレンジしてみてください。
川崎市では(公財)川崎市産業振興財団において、補助金・助成金を始めとして各種課題について相談に応じる専門家窓口相談(無料)や相談分野に応じて専門家を派遣する専門家派遣事業(有料)、緊急性を有する場合に専門家を派遣するワンデイコンサルティング事業(無料)など中小事業者の経営に関する各種の課題解決のための施策を行っています。是非一度ご相談ください。