マイナンバー制度の実務対策
- 2016/1/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 松井 利夫
いよいよ今月からマイナンバー制度がスタートします。経営者の皆様はもう準備がお済みでしょうか。特に、人手の少ない中小・小規模事業者にとっては、出来るだけ手間を掛けずに最低限の準備をしたいと思われているのではないでしょうか。そこで、中小・小規模事業者を対象に、どのようなことを準備したら良いかをご説明します。
Ⅰ.全体のスケジュール
- マイナンバー収集対象者の洗い出し
- 方針の明確化と規程作成
- 社内説明会の開催と事務取扱担当者教育
- 安全管理措置
- マイナンバー収集
Ⅱ.準備する内容
1.マイナンバー収集対象者の洗い出し
マイナンバー収集対象者には、従業員、報酬や不動産関係の支払い調書作成対象者などがありますが、中小・小規模事業者の場合は、従業員(役員、日雇労働者など短期雇用者を含む)とその扶養家族について洗い出しをして置けば良いでしょう。
2.方針の明確化と規程作成
特定個人情報等の適正な取扱いの確保について、会社組織として取り組むための基本方針を策定します。内容は、事業者の名称、関連法令、ガイドラインの遵守、安全管理措置等について定めます。
3.社内説明会の開催と事務取扱担当者教育
(1)全従業員向け説明会
マイナンバー制度について従業員一人ひとりに周知するとともに社内の取扱いルールを周知するための説明会を開催します。
(2)事務取扱担当者への安全管理研修
特定個人情報ファイルの作成や保管は厳しく制限されており、これらについて、事務取扱担当者にしっかりと理解させる必要があります。
4.安全管理措置
特定個人情報の漏洩を防止するため、次のような安全管理措置を講じなければなりません。
(1)組織的安全管理措置
①組織内でのマイナンバーを取り扱う事務担当者と役割の明確化、②取扱規程等に基づく運用の確認、③取扱状況を確認する手段の整備、をすることです。
(2)人的安全管理措置
①事務取扱担当者の監督、②事務取扱担当者の定期的な教育研修、をすることです。
(3)物理的安全管理措置
①特定個人情報等を取り扱う区域の管理、②機器及び電子媒体等の盗難防止、③マイナンバーの削除、機器及び電子媒体等の廃棄、をすることです。
(4)技術的安全管理措置
①アクセス制御、②アクセス者の識別と認証、③外部からの不正アクセスの防止、をすることです。
なお、中小規模事業者に対しては、安全管理措置に関する特例が設けられています。
5.マイナンバー収集
(1)既存従業員からのマイナンバーの取得
①マイナンバー取得の時期
行政機関に提出する書類にマイナンバーを記載する義務が発生する時期は、今年の1月以降です。一般的には、平成27年末に実施する年末調整において、初めてマイナンバーを記載する事務を行うケースが多いと思われます。マイナンバーは、既に収集可能になっていますので、マイナンバー記入が必要になる時にあわてないように余裕を持って早めに全従業員のマイナンバーを集めておくのが望ましいです。
②マイナンバー取得時の本人確認
身元確認の方法は次の通りです。
- 「通知カード」の場合は、顔写真付きの公的な身分証明書(運転免許証やパスポート)により確認します。
- 「個人番号カード」の場合、「個人番号カード」の表面で身元確認ができるため、別途身元確認のための書類は不要です。
(2)従業員の扶養家族のマイナンバー取得時の本人確認
従業員の扶養家族のマイナンバーの本人確認は、事業主に提出する書類の提出義務者が誰かによって、その方法が異なります。
①「扶養控除等申請書」等の場合
従業員本人が、扶養親族に関して個人番号関係事務実施者として、扶養親族の本人確認を行うため、会社は改めて扶養親族の本人確認を行う必要がありません。
②「国民年金第3号被保険者の届出」の場合
従業員の配偶者が届出義務者を有する書類であるため、原則として、会社が従業員の配偶者の本人確認をする必要があります。実務的には委任状を使用して、従業員が配偶者の代理人としてマイナンバーを会社に提供することもできます。
マイナンバー制度の導入に伴い、税や社会保障等の関係書類の様式が変わりますが、新様式は、マイナンバーを記載する箇所が増えるだけです。また、税や社会保障関係の書類へのマイナンバーの記載時期は、制度によって異なります。参考までに、書類の記載スケジュールの例を紹介します
1.税(例)
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申請書兼給与所得者の配偶者特別控除申請書
- 公的年金等の受給者の扶養親族等申請書 など
以上、施行日は平成28年1月1日提出分~
2.雇用保険(例)
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 雇用保険被保険者資格喪失届 など
以上、施行日は平成28年1月1日提出分~
3.健康保険、厚生年金保険(例)
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
- 健康保険被扶養者(異動)届 など
以上、施行日は平成29年1月1日提出分~
その他、詳しいことは、内閣官房などが編纂した「いよいよマイナンバーが始まります」(PDF)などをダウンロードしてご覧ください。
~お知らせ~
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「ものづくり・商業・サービス革新事業補助金の申請書作成支援セミナー」
- 日 時 平成28年2月17日 (水) 14時~16時30分
- 場 所 川崎市産業振興財団 9階 第2研修室
- 主 催 公益法人川崎市産業振興財団
- 講 師 中小企業診断士 松井利夫
- 受講料 1,000円
- お申込み 川崎市産業振興財団のHPをご覧ください