公的統計情報を経営に活用する
- 2016/4/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 清水信行
中小企業の経営者の皆様は、外部環境の分析について、情報をどのように取得しているでしょうか?例えば、これから消費者の財布の紐は固くなるか緩くなるかといった消費動向や、自社の所属する業界の今後1年間の景況感は良いのかどうか、などについてです。一般的には、新聞や経済雑誌を読んだりテレビで専門家のコメントを聞いたりして得ている方が多いのではないかと思います。
ただ、それでは書き手や話し手のフィルターを通しての情報になります。専門家やコメンテーターと呼ばれる方々は、それぞれ出身母体やバックグラウンドがあり、そのフィルターがかかることは否めません。中小企業の経営者の皆さまは、ご家族や従業員の生活がかかっています。仮に他人の話を聞いて誤った判断をした場合、悔いが残るのではないかと思います。
そこで是非実践していただきたいことが、公的統計情報のチェックです。それほど難しくて面倒なことではありません。特におすすめしたいのが、神奈川県統計センターHPの「統計センターからのお知らせ」のページです。
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f6764/
ここには、公表データ等一覧表として「総合」「人口」「労働賃金」「産業」「県民経済」「消費生活」「教育」「都市整備」「文化」の統計データがわかりやすく分類され、利用しやすく表示されています。その中でも特に有用と思われるのは、「総合」>「神奈川の統計」>「経済指標」>「1主要統計指標 統計表1(Excelファイル)」です。ここには、月次データとして、次のデータが整理され示されています。
- 総人口(県統計センター)
- 完全失業率(総務省統計局)
- 有効求人倍率、新規求人倍率(神奈川労働局)
- 現金給与総額、常用雇用指数、実質賃金指数、所定外労働時間数、工業生産指数(県統計センター)
- 企業倒産((株)東京商工リサーチ)
- 中小企業業況判断DI((財)神奈川産業振興センタ-)
- 家計消費支出、平均消費性向(横浜市)(総務省統計局)
- 百貨店販売額(県統計センター)
- 新車登録台数(神奈川自動車販売店協会)
- 建築物着工床面積、新設住宅着工戸数、公共機関からの受注工事(国土交通省)
- 輸出、輸入(横浜港)(横浜税関)
- 貸出約定平均金利(日本銀行横浜支店)
- 信用保証保証承諾額(各信用保証協会)
- 手形交換高(全国銀行協会)
- 消費者物価指数(県統計センター)
これだけの情報が整理されて掲載されているのを見ないのはもったいないと思えるくらいです。税金をかけてまとめられているのですから、皆さま是非度々チェックしていただきたいと思います。
さらに、統計の基本である「人口」については、もう少し詳しく見ていただきたいと思います。
「人口」>「神奈川県の人口と世帯」を見てみると、神奈川県の人口は未だピークアウトしていないことがわかります。日本の人口のピークは2008年ですから神奈川県はまだ勢いがあるといえそうです。市町村別で見ると横須賀市、三浦市の三浦半島地区は減少傾向ですが、優れた集客力を持つ湘南テラスモール(辻堂)を抱える藤沢市は増加傾向と、明暗が分かれています。経営者の方は自社の商圏の地域の動向について、注視する必要があると思います。
また、上級編となりますが、「県民経済」>「産業連関表」から、神奈川県産業連関表を見ていただきたいと思います。産業連関表は、①産業間のつながりを俯瞰できる「基本表」、②産業毎の付加価値率を参照できる「投入計数表」、③経済波及効果分析に利用される「逆行列計数表」、の3つがあります。経済波及効果分析(イベント等を行うことにより当初の需要による他産業への波及効果を分析する)については、「経済波及効果の簡易分析ツール」が用意されていますので、マニュアルどおりに作業を進めると経済波及効果分析ができるようになっております。
以上ですが、是非とも公的統計情報を経営に活用していただきたいと思っております