健やかな毎日を送る
- 2016/5/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 松浦尚之
先頃成立した平成28年度予算において、一般会計の歳出総額が96兆7218億円と史上最高となったことは記憶に新しいことと思われます。そのうち社会保障費(年金・医療・介護等)は、31.9兆円を占めており、平成23年度の28.7兆円と比較すると、この5年間で11%も増えたことになります。予算全体の増加が4.6%であることを考慮すると、憂慮すべき状況と言えます。
社会保障費をこれ以上増やさず、次世代に負の遺産を残さないためには、我々一人ひとりが健康に心掛けた生活を送ることが大切です。そうは言っても「目の前の仕事と生活に追われて、それどころではない」という方がほとんどだと思います。私もそうです。そんな私が「アタマの片隅に少しおいておくと、ちょっとだけ健康的な日常を送れるかもしれない」と思った情報をいくつか仕入れてきましたので、この場を借りてご紹介させていただきます。
【体内時計】
我々の身体は、24時間から25時間のリズムで成り立っています。即ち「1日24時間」よりも長いのです。このズレを放っておくと、日常生活に差し障りが出てしまいます。このリズムを調整するのが、太陽の光です。これから夏に向けて、日の出が次第に早くなります。良い目覚めで快適な朝を迎えたい方は、是非カーテンを開けて、太陽の光のシャワーで目覚めてはいかがでしょうか。目覚まし時計で起床するのとは、また違った素敵な目覚めを体験できると思います。また、注意が必要なのは、就寝前に強い光を浴びてしまうことです。パソコンやスマートフォンから発せられる光は強く、体内時計を狂わせてしまいかねません。夜遅くまで仕事をせざるを得ない場合は致し方ありませんが、就寝時にスマートフォンについ手が伸びSNSやwebサイトを見てしまうという方は、生活習慣を改めたほうがよいかもしれません。
【内臓の働く時間帯】
臓器によって活発に働く時間帯が異なることを、皆様ご存知でしょうか?
例えば、解毒や代謝の機能を果たす肝臓は、朝から働き始めてお昼前に最も活発に働き、その後の働きは次第に低下していきます。ということは、朝食を抜くということは大変勿体ないと言わざるを得ません。また、夜遅くに、脂質や糖質の多い食事を摂ることは、健康管理のうえで好ましいこととは言えません。まずは、朝にしっかりと食事をとり、1日の上で最も栄養豊富な料理を昼食でいただき、夜間はあっさりとした食事を心がけてみてはいかがでしょうか。ちなみに私は、夜間に小腹が減ってどうしようもないときには、納豆を食べるようにしています。納豆には、血栓を溶解する酵素(ナットウキナーゼ)が含まれており、未明に起きやすいと言われる脳梗塞のリスクを下げる効果を期待してのことです。また血液の流れが良くなることで、血圧の上昇を防き、朝から昼にかけて起きやすい心筋梗塞の予防効果も期待しています。但し、すでに血液の固まりを防ぐお薬を飲んでいる方にはお勧めできませんし、塩分摂取量の多い方には、納豆にかける調味料に工夫が必要となります。
【暑い夏を乗り切る栄養素】
暑い日が続くと、食欲が減退して、3食ともあっさりした食事になりがちです。肉類や魚類を避けるあまり、炭水化物が多い食事に偏りがちです。また、炭酸飲料による糖質の過剰摂取も私自身に覚えがあります。これら炭水化物や糖質をエネルギーに変換する際に必要なのが、ビタミンB1です。ビタミンB1が足りなくなると、エネルギー不足に陥り、いつまでたっても疲労感の抜けない夏になってしまいます。ビタミンB1を多く含む食材(豚肉、鰻、たらこ、豆類など)を多く含む料理を1日3食のいずれかに取り入れて、夏を元気に乗り切りましょう。
【機能性表示食品】
冒頭で、社会保障費の増大と、我々自身による健康管理の大切さについて触れました。健康管理に役立つ制度が、平成27年4月より新たに始まりました。それが「機能性表示食品」制度です。概要を以下に記します。
- 「おなかの調子を整える」「脂肪の吸収をおだやかにする」等、特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)という食品の機能性を表示することができる食品。
- 安全性の確保を前提とし、科学的根拠に基づいた機能性が、事業者の責任において表示されるもの。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではない。
- 消費者が誤認することなく商品を選択することができるよう、適正な表示などによる情報提供が行われるもの。
(出所:消費者庁「「機能性表示食品」って何?」より筆者一部要約)
簡単に誤解を恐れず纏めますと、「この食品は、○○○という機能(効果)を持つ成分を含んでいるので、○○○という機能が一般的にあると言えますが、この食品自体に効果があるかどうかまでは、国でお墨付きを与えることまではしていません。」といったところでしょうか。(あくまで筆者の見解ということでご理解ください。)。
私のようにあまり栄養学に詳しくない者でも、うまく活用できれば、幾分食生活が改善できるかなと思っています。なお、平成28年3月現在で消費者庁に累計280件超にのぼる届出があり、その種類は、乳酸菌飲料やお茶、その他清涼飲料水、サプリメントだけでなく、食用油、米飯、さばやいわしの煮物、みかんやもやし等の生鮮食品までと多種多様な広がりを見せています。
【事業者としての視点】
秦の始皇帝が不老不死の薬を探し求めていたことは有名ですが、健康長寿は古来より万人の願いです。即ち「健康」というキーワードに関係するマーケットはいつの時代にも存在し、超高齢化社会を迎える現代日本にとってはますます魅力的です(ちなみに中国も高齢化社会になりつつあります)。前述の「機能性表示食品」は、国の定めた一定のルールに基づき安全性や機能性に関する評価を行うなど、届出に要する準備は容易なものではありませんが、特定保健用食品(トクホ)に比べると、ハードルが下げられていることは確かです。また、政府(内閣官房日本経済再生総合事務局)が今年3月に発表した「日本再興戦略改訂2015」においても、「健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供」が成長戦略における主要施策例として掲げられています。昨年4月には、医療分野の研究開発の司令塔機能を果たすことを目的として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(通称:AMED)が設立されました。医療分野と工業分野の連携推進を力強く後押しする体制を整えようとしています。さらに神奈川県では、一昨年1月に「未病を治すかながわ宣言」、7月には「未病産業」の創出に向けた取組みが発表されています。つまりは、「健康」がマーケットの主役になってきたと理解できます。
【最後に】
昨今のテレビ放送では、盛んに健康食品や健康器具の通信販売の番組が放映されています。仕事が忙しくて自己の健康管理がおろそかになった結果、病気になって事業に支障が出たという例もよく紹介されています。健康管理に気をつけて仕事に取り組むとともに、「健康」というキーワードで語られる市場や政策の動きを常に見定め、ビジネスチャンスをものにして、息切れすることなく健やかな経営を目標に毎日励みたいものです。