中小企業こそワークライフバランス
- 2017/3/1
- トピックス
1.ワークライフバランスとは
ワークライフバランス(以下、WLB)とは、一般的に「仕事と生活の調和」と理解されており、内閣府の仕事と生活の調和憲章では、仕事と生活が調和した社会を次のように定義しています。
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」
WLBの取組みは、次のようなステップで推進されてきました。
(1)従業員の福利厚生としての取組み
バブル崩壊後、非正規労働者の増加、成果主義の導入、長時間労働の増加などにより、メンタルヘルスや個別労働紛争が増加し、職場環境が著しく悪化したことの反省によるWLBへの取り組みが行われました。
(2)社会的責任としての取組み
東日本大震災を契機に、大企業を中心に社会貢献による企業価値を高めるという観点から、WLBの取組みが行われました。
2.経営課題としてのWLB
福利厚生として、また社会貢献の一環として浸透してきたWLBは今、経営の重要な課題として取組む段階に入って来ました。その理由は次のとおりです。
(1)人材不足の深刻化
採用活動をされている会社は、採用環境が一段と厳しくなってきたことを感じておられることでしょう。平成28年11月現在で、完全失業率は3.1%まで低下、有効求人倍率は1.41に上昇しました。平成28年3月卒の大学・高校生の内定率も、100%に近い状況です。この傾向は、生産人口が減り続けることを考えると、一過性のことではなく、今後も長く続くと考えなければなりません。
人材確保が難しい中小企業こそ、経営の重要課題としてWLBに取り組む必要に迫られているのです。
(2)要介護人口の増大
団塊世代が3年前に全員65歳以上になりました。今後高齢化が急速に進むことになります。エイジング総合研究センターの推計によれば、今後10年間で、要介護高齢者が130万人増加することになります。
今後は、どの職場にも、介護をしなければならない社員がいる時代となり、人手不足の中小企業こそ、介護と仕事の両立する職場環境づくりを経営者は考えなければなりません。
3.中小企業こそWLB
社員数の少ない中小企業は、WLBの取り組みが難しい環境というのは事実と思います。
少し古いデータですが、2006年度の中小企業白書に、中小企業のWLBについての実態調査結果が掲載されています。アンケート結果から意外にも中小企業の次のような特長が分かりました。
- 規模の小さい企業ほど仕事と生活の両立が「しやすい」との回答割合が多い。
- 女性社員が出産後、復職する割合が高い。
- 中小企業が育児で離職した女性の受け皿になっている。
- 制度は整っていないが柔軟に対応している。
- 中小企業の女性ほど子供の数が多い。
また、WLBの取組み方と業績の関係の調査結果では、WLBは業績にも好影響を与えることが分かりました。その要因として、仕事の進め方の見直しが始まり、業務の効率化が図られ、自ら考え実行できる人材が育つという好循環が生まれていると考えられます。
4.WLB実現に向けて
雇用環境の変化により、経営の重要課題としてのWLBに取組みが必要になっていること、中小企業もやりようによってWLBの取組みが可能で、WLBが業績によい結果をもたらすことがお分かりいただけたと思います。
WLBの実現のためには、まず「長時間労働をなくす」という目標を会社全体で共有し、「仕事の見える化」を行い、若い人材に思い切って仕事をまかせ、「自律的人材」に育ててください。そして、WLBは、育児・介護などで休む人だけでなく、残る人たちも働きやすくなるということを皆さんで体験し、業績と働きやすさが両立するWLBを実現されるようお願いします。