中小企業・小規模企業者のWebサイトの活用について
- 2018/6/1
- 診断士の視点
はじめに
企業のWebサイト開設状況は、2005年で85.6%が開設していると総務省からの発表があります(出典:平成27年版 情報通信白書)。かなり古いデータですので、現在はさらに多くの企業が開設していると予想されます。とは言え、特に中小企業・小規模企業者においては、Webサイトを有効活用できていないケースも多く見受けられるようです。具体的には「ほとんど更新されていない」「内容が会社概要的なものに留まっている」などでしょうか。恐らく、このような“開設しているだけ”の状態ですと、コストばかりがかかり、Webサイトの役目も発揮できていないと考えられます。
また、その背景として、2015年中小企業庁の「中小企業の成長と投資活動に関するアンケート調査」では、以下のような問題点を確認できます。
【IT投資実施企業のIT投資を行わない理由】(一部抜粋)
- ITを導入できる人材がいない(3%)
- 導入効果が分からない、評価できない(8%)
- コストが負担できない(3%)
- 社員がITを使いこなせない(7%)
資料:中小企業庁委託「中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査」(2015年12月、(株)帝国データバンク)
(注)
- 複数回答のため、合計は必ずしも100%にならない
- IT投資を重要であると回答しているが現在IT投資を行っていない企業を集計している
- 「その他」の項目は表示していない
この調査では「IT導入」という大きな括りですが、少なからずWebサイトへの投資にも通じると考えられるのではないでしょうか。実際に、社長の生の声からも、上記については耳にすることがあります。
確かに、特に中小企業・小規模企業者には、重くのしかかる問題点ではないでしょうか。ただし、逆を返せば、Webサイトを有効活用でき、経営に役立てることができれば、これらの問題点は、それに見合う費用として位置づけられると考えます。それには、最低限抑えておきたい幾つかのポイントを整理して挙げたいと考えます。
因みに、上記にある「コストが負担できない」については、以下のような補助金を利用する手もあります。
IT補助金(https://www.it-hojo.jp/)
小規模事業者持続化補助金(http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/2018/180309jizoku.htm)
※時期により募集状況が異なります。詳細は当会に「お問い合わせ」ください。
1. 取捨選択する
まず、前段として「手広くやり過ぎない」という点に注意が必要です。やった方がいいから、あれもこれも、と言って対応してしまうと、それこそリソースが足りず、どれも結局、放置状態になってしまうケースが多くありますので注意が必要です。集中すべき点を決め、そこにリソースを投入していきましょう。
2. ターゲットを絞り込む
Webサイトに限ったことではないですが、Webサイトも同様にターゲットを絞り込む必要があります。誰のために開設しているWebサイトなのか、閲覧者は何を求めてアクセスしているのか、そのターゲットに向けての情報発信が必要です。そこにズレがあると、数秒で別サイトに移動されてしまいます。
また、自社で想定しているターゲットと実際の利用者に乖離がある場合もあるので注意が必要です。これを防ぐために、さらには自社の「強み」の再確認のため、コアなファン層、リピーターからの情報収集が有効です。アンケート、インタビューなどで、なぜ自社の商品やサービスを利用するのか、そこに他社にはない「強み」が隠されている可能性があります。また、お客様の声は、客観的情報として、Webサイトに掲載するようにしましょう(事前に本人の承諾を得ておく)。
3. 競合調査を行う
競合と考えられるWebサイトを検索し、調査をしましょう。競合がどのような展開をしているのか、価格、見やすさ、信頼度、購入・問い合わせまでの導線など、参考になる点が多く見つけられるでしょう。閲覧者は、複数のWebサイトを閲覧、比較しますので、競合と自社サイトと比較し、劣っていれば改善の必要も出てきます。また、競合とどのような差別化を図っていくかなど、基本路線を考えるにも重要です。
競合調査の際は、以下のような表にしておくと、一覧性があり、情報の埋没を防ぎ、複数人とのミーティングにも便利です(一番左の項目は適宜カスタマイズする)。
自社 (URL) |
競合A
(URL) |
競合B
(URL) |
|
商品・サービス | ●●が特徴 | ●●が特徴 | |
価格 | 000円~ | 高い(000円~) | 安い(000円~) |
サイト全体の見やすさ | 〇 | ◎ | × |
独自コンテンツ | ◎ | 〇 | ◎ |
特記事項 |
また、Webサイトの戦略を考える上で、3C分析のフレームワークが使いやすいです。自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つに分類し、それぞれの視点で分析します。
例えば、以下の視点などを競合調査結果に加えて、社内で議論してみてはいかがでしょう。
自社(Company)
- 売上が伸びている、減っている商品、収益性の高い商品、低い商品は何か?
- 自社の商品・サービスの売りは何か?
- 自社が得意とする技術や販売手法などはあるか。他社に真似できないものはあるか?
- 顧客管理・商品管理はできているか?
- 自社は顧客からどのように見られているか?
顧客(Customer)
- なぜ顧客は、自社の商品・サービスを選ぶのか? また選ばないのか?
- 顧客のライフスタイルはどのように変化しているか?
- 最近の流行・新技術・法改正で、自社商品・サービスに影響を及ぼすものはあるか?
- 自社商品・サービスはどのようなシーンで利用されているか?
競合(Competitor)
- 競合商品と比較し、自社商品・サービスの優位性はあるか?また、劣る点はあるか?
- 競合商品との価格差、機能の違いはあるか?
- 自社商品・サービスは模倣されやすいか?
- なぜ、顧客は自社商品・サービスではなく、競合商品を選ぶのか?
- 競合が手を出していない、ニーズがある市場はあるか?
4. 定点観測を行う
Google Analytics(グーグル アナリティクス)という無料で使用できるアクセス解析のシステムがあります。導入に少し手間がかかりますが、Webサイトの状況を把握できるようになります。
例えば、
- セッション数:訪問数
- 平均PV数:1セッションあたり、どれだけページを見られているか
- ユーザー数:アクセスしたユーザーの人数。同じ人がアクセスしても1カウント
- コンバージョン率:成約したセッションの割合
- 検索エンジンキーワード:どんなキーワードでアクセスされたか
- トラフィック:どんな経路でアクセスしてきたか
- 離脱数・離脱率:どのページの離脱率が高いか
などが、わかるようになります。これらを確認することによりWebサイトの改善点が見えてきます。
「Googleアナリティクス 使い方」などで検索すると、わかりやすいページが沢山表示されますので、確認しながら進めれば導入もスムーズに進みます。
5. 最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございます。多くのことに触れることはできませんでしたが、今回は中でも意識していただきたい点について触れさせていただきました。上記をすべて実施するには、それなりにマンパワーがかかりますので、まずは、取っかかりとして「競合調査を行う」のみでもかまいません。Webサイト上の競合を知ることで、新たな気づきを得られる可能性は大きいと考えます。是非、お試しいただければ幸いです。