今起こっている大変革を中小企業はどう乗り越えるか

草刈利彦

社長、ご存知ですか。

ものづくりの世界に大変革が起こっています。本日はその変革を中小企業がどの様に乗り越えていくのか、お話しします。

 

新技術の可能性に気づかないとどうなるか - コダックの失敗

1960年代にカメラ・フィルム市場で90%以上のシェアを持っていたコダックが富士フィルムに負け、そして破綻した理由は、既存技術の観点からしか新しい技術をみることができず、新しい技術で儲かる仕組みを作ることが出来なかったからだと言われています。

コダックは1975年12月に世界で初めてデジタルカメラを発明しました。富士フィルムが一般向けデジタルカメラを発表したのが1988年です。富士フィルムより13年も前にデジタルカメラを発明していたにもかかわらず、コダックは印画紙で儲けるために、人・もの・カネを投資することにこだわり、デジタルカメラが作り出す世界で儲けるための事業を正しく描くことができなかったのです。

デジタルカメラで撮ったデータを印画紙に焼く仕組みは考えましたが、画像データを「思い出を共有し、人生を共有しよう」というコダックのキャッチフレーズどおりに使うことはしませんでした。もしその写真共有サイトを人々が写真や近況、ニュースや情報へのリンクをシェアする場として発展さることができたなら、コダックはデジタル時代の主役になれたかもしれません。

でもしませんでした。デジタル写真データのオンライン共有によって儲かるかもしれないという新しい価値を見落とし、デジタル写真データを印刷事業拡大の手段としか考えなかったからです。

 

押し寄せる技術的大変革のうねり

今大変革を起こすような技術のうねりが押し寄せています。過去のうねりも含めて振り返ってみましょう。1980年代はコンピュータが普及し、会社に1台しかなかった大きな機械があっという間に各人の机の上に載るようになりました。1995年ごろからインターネットによるコンピュータ同士の通信が簡単にできるようになりました。2000年代には今我々が当たり前に感じる「検索」と「Webショッピング」が身近になりました。携帯の普及や通信速度の向上により、チャットというあたかも会話をしているようなコミュニケーションが可能になり、ビデオも共有できるようになりました。

そして今やデータはコンピュータからばかりでなくあらゆるモノから生み出されるようになりました。工場の機械、ランニングシューズ、枕からもデータが生み出されています。そのデータ量は毎年指数関数的に増えています。その様な大量のデータを、コンピュータを使って分析して今までは予想出来なかったことを予測できるようになりました。

たとえば、米国のGE(ゼネラル・エレクトリック社)は航空機のエンジンを製造していますが、過去は故障や定期点検などの際に交換部品を供給することで儲けていました。しかし最近はエンジンの使用に伴う全ての費用に応じて課金するようになっています。GEはエンジンに付いているセンサーからのデータを常に衛星通信回線経由で収集し、自社製エンジンがいつどこでどのような稼働状態にあるのかを常に監視しています。得られたデータを分析することにより、燃料が節約できるエンジン使用条件を航空会社に提案し、それによって儲けをあげているのです。

航空会社は低価格エンジンを欲しいのではなく、運用コストが安くなるエンジンサービスが欲しいのだという「潜在ニーズ」に目をつけたところがGEの凄いところです。

 

グローバル企業が評価する改善活動

航空機エンジンの例のように、現在はコンピュータで大量のデータを分析して、有益な情報を生み出すことができます。データの取得費用やコンピュータの使用料はどんどん安くなっています。たとえばデータ取得用の加速度センサーは1個500円、スーパーコンピュータ「京」の使用量は1時間14.53円(注1)からです。

(注1)TECHWAVE.JPより引用(https://techwave.jp/archives/k-computer-fee-is-14point53-yen-per-hour.html

社長、このように道具が安く使える世界で中小企業はどのように振る舞っていけばよいとお考えですか。

私は、まず現在行っている事業で「不」(不平や不満、不便、不利、不都合、不幸など)を見つけることだと考えます(共感)。次になぜその様な「不」が生まれてくるのか理由を考えます(問題定義)。長年おこなってきた事業分野なら、理由はすぐに思いつくはずです。でも日ごろはその日の仕事に忙しくて、考えることをしていないのではないでしょうか。

そして、「不」の原因を解消するために新しい道具が使えないかと検討してみます(創造)。検討のツールとしてよく聞くブレイン・ストーミングをお勧めします。

最後に検討の結果を反映させた簡単な試作品を作ってお客様に使ってもらいましょう(プロトタイプ)。3Dプリンターを使えば、ハードウェアでも簡単に試作品が作れる時代になりました。お客様の評価を検討して、必要ならば更に修正を加え、次の試作品を製作します。なるべく費用を掛けずに必要最小限の製品レベルで作るというのがポイントです。

この活動はどこかで聞いたことがありませんか。そう、改善活動です。昔からやってきた改善活動を新しい道具類を使って行えば、今起こっている大変革を乗り越えていくことが可能なのです。実は、Amazon, Facebook, Google, Appleなど、世界の名だたる企業が今「改善活動」に取り組んでいます。ただし、名前は「改善活動」ではなく、「デザイン思考」と呼んでいます。

社長が昔からやってきた「当たり前のこと」に改めて取り組んでください。業績が更に向上したというご連絡を楽しみにお待ちしています。

デザイン思考の4ステップ

 

 

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