働き方改革と人事ニアリングⓇ
- 2018/9/1
- トピックス
はじめに
2018年7月に公布された「働き方改革関連法案」は、いよいよ2019年4月から順次施行されることになりました。少子高齢化により生産年齢人口が減少し、グローバル化が更に進む時代に向けて「生産性の向上」は必須であり、国が一丸となって取り組まなければならない改革であることは確かです。
一方で、核家族化やITの進歩により人間関係が希薄になっていく中で、組織として生産性を向上していく為には、働く人の能力を最大限引き出すための環境の整備と、経営者並びに働く人の意識の変革が必要ではないでしょうか。
1.働き方改革の概要と課題
厚生労働省・中小企業庁が事業主向けに作成したチラシには、働き方改革のポイントとして以下の3つが書かれています。
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- 時間外労働の上限規制が導入されます!:(中小企業は2020年4月から施行)
- 年次有給休暇の確実な取得が必要です!
- 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止されます!:(中小企業は2021年4月から施行)
更に、2023年4月には、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金(50%以上)の中小企業への猶予措置が廃止され、違反した場合は懲役または罰金が科せられます。
この様な施策を通して魅力ある職場づくりをして、労働生産性の向上や女性、若者の人材育成をしていくことを国は求めていますが、これで「働き方」が変わるのでしょうか。働く人にとってはウエルカムな内容かも知れませんが、利益率が低い下請製造業、大手の進出で売り上げ不振の小売・飲食業など、人手不足、不利な取引条件、脆弱な経営資源の小規模・中小企業経営者にとっては負担が大きく実現が難しい制度と言えます。勿論、働き方改革法案を進めるにあたって、国は事業者向けにガイドラインの作成や、相談、助成、支援策を講じていくようですが、実行する経営者はどうやって法を守りながら経営を持続させて、かつ働きやすい環境を実現するのか大いに悩むところです。
また、多くの経営者は右肩上がりの高度経済成長を経験してきた高齢者で、働き方の考えを変えるのは容易ではありません。とはいえ、我が国の雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者が、働き易い環境整えて多様な働き手が充実した人生を送れる社会にしていかなければ、生産性は上がらず待遇は改善されず、働き方改革は実現せず両者が不幸になってしまいます。
私は、法を守りながら働きやすい環境を作り、生産性を向上させるためには、「モラル」と「モラール」の向上が必要だと思っています。即ち、働きやすい環境を作って働く人の能力をフルに活用するためには、経営者が働く人を「人として尊敬する意識(モラル」を持ち、働く人の「勤労意欲(モラール)を向上」させることが必要です。その一つの方法として、私が提唱している「人事ニアリングⓇ」を実践して欲しいと思っているのです。
2.「モラル」と「モラール」を向上させる「人事ニアリングⓇ」
人事ニアリングⓇは、「人事」と「エンジニアリング」を掛け合わせた私が作った造語で、組織を機能させるための概念を表しています。「機能しない組織は社会的害悪」と言う言葉をお聞きになった方は多いと思いますが、企業の場合、その目的に沿って(適正な)利益を上げているかどうかで機能しているか否かの判断が出来ます。
企業の役割は、市場のニーズに応えて必要なものを提供すること、社員並びに家族の生計の支えになること、利益を還元して社会に貢献すること、そして企業そのものが存続することと言えます。社会的な責任を果たしながら(適正な)利益を上げていくことと言えるのですが、その原動力になっているのは人です。いかに人の持っている能力を引き出して高めるか、即ち、いかに人を機能させるかが生産性を向上させる原動力になり、組織を機能させることに繋がります。この様に、人を機能させ組織を機能させることを私は「人事ニアリングⓇ」と名付けました。
では、どうやって人や組織を機能させたら良いでしょうか、私は以下の3つを「人事ニアリングⓇ」の主な手法として提唱しています。
- コーディネーション(仕事の前後・上下・左右を調整すること)
- ブレーンストーミング(自由闊達に意見を述べ合ってアイデアを出すこと)
- サービス精神(サービス・マーケティングを導入して、経営者・社員・顧客夫々の間のマーケティング活動をすること)
これ等3つの手法に共通しているのは「コミュニケーション」ですが、大事なことは全社的に実践することです。経営者、管理職は勿論ですが、企業の潤滑油の役割をもつ管理部門(人事・総務・経理など)の人達には、率先して実践して欲しいと思います。それによって、組織は機能し、生産性が向上し、職場は明るく生き生きとしてきます。
まとめ
働き方改革を実現するために必要な「生産性の向上」を「モラル」と「モラール」の向上に求めました。そして「人事ニアリングⓇ」を実践することにより、働き方改革と言う制度が取り入れやすくなるのではないでしょうか。人を活かして能力を最大限引き出す努力と人を思いやる気持ちがあれば「人事ニアリングⓇ」は実践できます。是非実践して機能する組織作りをして下さい。
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Writer:東 新(中小企業診断士)
組織を機能させることをモットーに“人事ニアリングⓇ”を提唱し、
経営改善、海外進出、マーケティング、事業計画策定等の支援を
行っています。なお、「人事ニアリングⓇ」は著者の商標登録です。
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