今がチャンス!キャッシュレス対応のすすめ
- 2019/5/1
- 診断士の視点
1. はじめに
平成から令和に元号も変わり、日本としては大きな節目を一つ越えました。令和になって、初年度である今年の大きなイベント、消費税増税が10月に計画されています。最初に消費税が導入されたのは平成元年。当時は3%であった消費税も、30年を経て令和元年に消費税が10%に到達します。
令和最初の「診断士の視点」は「キャッシュレス対応のすすめ」についてです。
2. 消費税増税対策(キャッシュレス・消費者還元事業)
今回の消費税増税で、最終消費者の懐は約2%支払いが多くなってしまいます。この増税による消費の冷え込み対策の一環として、政府はポイント還元を主軸としたキャッシュレス・消費者還元事業を実施します。一般消費者が購入額の最大5%分ポイント還元を受けられるものであり、「消費者が(a)キャッシュレス決済手段を用いて(b)中小・小規模の(c)小売店・サービス業者・飲食店等で支払いを行った場合」と条件が記載されています。ポイントは、これら(a)(b)(c)3つ全てを満たす必要があります。
2%の増税だけど5%のポイント還元であれば、実質3%の減額となり、一般消費者は最大限この制度の利用を試みると予想されます。よって、一般消費者はこのポイント還元を受けられる店舗で買い物をしたいと考えます。ポイント還元を受けるための条件(a)がクリアーできるかどうかがカギになります。そこで問題となるのが、いつも行く街のお店は“キャッシュレス対応できているのか?”です。
経済産業省によると、平成27年の日本のキャッシュレス決済比率は、18.4%。そして経済産業省の調査では都内の飲食店約13万店のうちクレジットカードが使えるのは約3分の1にすぎないことが判明しています。各店舗が様々な特徴を出し、しのぎを削っていますが、このポイント還元政策に乗るか乗らないかで、販売価格の3%分無条件に不利な状況に陥りかねないことになります。
3. キャッシュレス化の課題
キャッシュレス化に対する課題を店舗側から見てみましょう。
端末導入コスト
「支払端末」の導入にコストが発生する。端末設置のスペースコストや回線引込の負担も発生する。
運用コスト
支払サービス事業者へ支払う手数料コストが発生する。支払サービス事業者との通信コストが発生する。
オペレーション負担
キャッシュレス支払を選択するための操作が発生する。売上票(利用控え)等を発行するための用紙コストが発生する。
資金化までのタイムラグ
一般的にクレジットカード支払では、資金化までに半月~1ヶ月程度のタイムラグが発生する。
私の店舗設計経験から申しますと、端末設置のスペースや回線引込設計で苦労しました。日々の運用では、端末操作ミスや返品対応、売上票の紙切れなども気を付けなければなりませんでした。
4. 事業主支援概要(キャッシュレス・消費者還元事業)
これらの課題に対して、政府のキャッシュレス・消費者還元事業では以下の支援策を出しています。
端末導入コスト
端末費用の2/3は政府補助、1/3は端末導入を進める決済事業者が負担することになっていますので、導入する側では負担はありません。
運用コスト
手数料率3.25%以下の場合、1/3を政府が補助します。よって最大実質2.17%程度の手数料となります。
その他
ポイント還元は決済事業者が行うため、小売・サービス・飲食の店舗側の負担はありません。ただし、国より決済事業者として認定を受けた決済事業者経由で決済端末導入時に利用できます。また、この事業は2020年6月までの期限処置です。
平成31年度予算案「キャッシュレス・消費者還元事業」PR資料
https://www.kansai.meti.go.jp/5ryusa/cashless/setsumeisiryou.pdf
キャッシュレス・消費者還元事業HP
https://cashless.go.jp/
5. キャッシュ(現金)の課題
一方で、キャッシュ(現金)の取り扱いにも様々な問題点が指摘されています。
<消費者>
かさ張る、つり計算が面倒、盗難リスク、ATM探し、利用履歴管理の手間、不衛生
<事業者>
レジ締め、銀行入出金、釣銭用意、現金残高管理、盗難・不正リスク、衛生対策
<政府・銀行>
店舗・ATM設置運用コスト、発行・交換コスト、管理・運搬コスト、マネーロンダリング対策、AIやFintechに必要な情報収集が困難
特に<事業者>の現金管理コストについては、人手不足や働き方改革の中で生産性を上げるためには考えていく必要があります。私の経験では、店舗で日に最低30分(銀行手続きやレジ締め等)を要しました。週休1日、月26日稼働で月換算13時間程度になります。一日10時間営業で1.3日分、年間にして15.6日分です。
そして店舗人件費の約5%が管理コストとなる計算でした。これは熟練した店員がやってこの時間でしたが、多種多様な人がレジを扱う場合、この管理時間が増大するだけでなく、レジ操作ミスの調査や盗難に備えて監視カメラ設置、監督・教育に係る時間負担も考える必要が出てきます。
6. 日本のキャッシュレス化への動き
日本は、先進国の中でも現金流通量が突出して多く、キャッシュレス比率が2割以下と他国の4割から8割と比べて少ない状況です。そこで2018 年に経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、2025 年までに「キャッシュレス決済比率」を4割程度とし、将来的には世界最高水準の8割を目指すとされています。(下記図表)
この指針に合わせて、<政府・銀行>から課題解決に向けた政策・方策が様々に出てくると予想されます。また、<消費者>からのキャッシュレス利用圧力も増えると想像されます。クレジットカード会社のテレビ広告で「クレジットカードが使えないなら買わない」といった誇張気味の宣伝もありました。
日本クレジット協会2018年調べの中で、「キャッシュレス決済に対応していない店舗を避けることがありますか」と質問したところ、「常に避ける」「避けることがある」という回答を合わせると41%だったとのことです。キャッシュレスが利用できない店舗を敬遠する消費者は徐々に増えてくるかもしれません。
7. まとめ
端末費用の負担が無いことや手数料が抑えられるだけではなく、売上機会損失を防ぎ、キャッシュレスを望む顧客への対応から新たな客層の獲得も期待されます。また、政府の指針がキャッシュレス化へと向かっています。今、消費税増税前に、政府のキャッシュレス・消費者還元事業でキャッシュレス対応を検討されてはいかがでしょうか。