成果の上がる生産性向上策
- 2019/7/1
- 診断士の視点
はじめに
昨今「生産性の向上」のために企業は様々な改善活動や設備投資を行っているが、成果、つまり利益増加に結び付けることが難しい事例をみることが多くなっています。なぜ、生産性が上がらないのか、利益に結びつけることは難しいのか。成果の上がる生産性向上策を考えてみます。
「生産性」とは
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、「生産性」という言葉はJIS(日本工業規格)にJISZ8141に次のように定義されています。
(JISZ8141から一部引用)
つまり、「生産性」は産出量を増加するか、投入量を減少するか、またはその両方で生産性を向上することができることになります。
「成果」とは
生産性の向上が産出量の増加、投入量の減少、またはその両方ということは、生産性向上の成果は、利益の増大という形で表れてきます。利益の増加が成果に現れるということは成果の評価の単位は工程単位、職場単位などではなく、企業における生産活動すべてということになります。
「生産性向上」を阻害する要因
では、なぜ生産性が上がらないのか考えてみましょう。製造業を例にすると、工程が5つあるとすると、各工程の能力(例えば1日で作業できる個数)の和が全体の能力(1日で生産できる個数)になっていますか?おそらくなっていないと思います。それは、大きく2つの要因、各工程の能力に差がある場合、能力の変動を考慮していない場合が考えられます。
- 工程の能力に差がある場合
工程の能力に差があると、能力が最も低い工程(上記の例では工程3)が全体の生産能力を決定し、他の工程の能力をどんなに上げても全体の生産能力は上がりません。工程3の手前で仕掛在庫が増大し、工程4、工程5では手待ちが発生するだけになります。この能力が最も低い工程をボトルネックといいます。ボトルネックとは瓶の首という意味で、瓶の中で一番細く、流れが悪くなる場所のことを指します。工程の手前で作業待ちの仕掛品がたまっているところがあるとそこがボトルネック工程です。各工程や職場での小集団活動や改善活動がボトルネック工程以外の部分最適になり生産性は向上しません。
- 能力の変動を考慮していない場合
工程の能力を等しくするラインバランスを意識しすぎると、余力がなくなってしまいます。工程の能力の変動が発生した場合、例えば、機械であれば故障、人でれば病欠などが発生した場合、復帰しても遅れを挽回するだけの能力が不足しているため、遅れを挽回するためには、時間を増加するしかない状態になり、投入量が増加し生産性が悪化します。
「生産性」を向上させるための方策
生産性を向上させるためには、生産性向上を阻害している要因を取り除くことが必要です。
① 工程能力に差がある場合
ボトルネック工程(上記の例であれば工程2)の能力を上げることが第1です。工程2の能力を向上させない限り、全体の生産性は向上しません。対策としては、工程2の機械化等による能力向上、他の工程に負荷を移す、他の工程からサポートに入る、などがあります。
② 工程能力に変動がある場合
工程能力の低下をカバーする方法として、1)余力を持つ、2)能力減少の影響を小さくする、などの対策があります。
(ア)余力を持つ
工程能力以下で生産計画を立てることです。生産計画と工程能力の差が余力になります。余力はムダではありません。高速道路での移動を時速80kmのスピードで計画しても、時速80km以上で走れないと渋滞などによる遅れを挽回することができません。時速100kmで走ることで遅れを挽回することができます。この時速20kmの差が余力となります。
(イ)能力変動(減少)の影響を小さくする
生産の単位を小さくすることです。例えば、次工程への仕掛品の移動が1日単位となっている場合を考えます。どこかの工程(例えば工程3)で機械が故障して1日停止した場合、工程4の前に仕掛品がなければ、工程3が回復後の1日は工程4に仕掛品が入ってこず作業ができません(1日分の作業遅れ)。しかし、1個単位で流している場合には、1個分の作業遅れにとどめることができます。作業遅れが小さいほど、遅れを挽回するための余力は小さくて済むことになります。
結論
ボトルネックを解消し、能力変動(減少)の影響を小さくし、その分の余力を持てば生産性は向上します。さあ、自社の生産性を向上させて行きましょう。