事業継続計画(BCP)策定のお勧め

安藤 一彦

事業継続計画(BCP)の基礎的な事を説明します。これらを通じて、想定される大地震や最近頻発している風水害等への事前対策の大切さに気づいて頂けることを期待しています。

1.BCPとその必要性

1)BCPとは

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、感染症等の緊急事態に遭遇した場合、中核となる事業の継続又は早期復旧を可能にするために、事前に取り決めておく計画のことです。

BCPの策定における支援の要点は、経営資源(第一には、人命)を守り、事業を続けることを援助することであり、策定されたBCPが有事に機能を発揮できるように、日常より訓練・演習を繰り返し、計画の精度・水準を向上・改善する仕組みを社内に定着することです。

2)中小企業にとってのBCP策定の必要性

  • 自然災害、火災、感染症等の影響による会社倒産等の事態から会社を守る
  • 自社のBCPをステークホルダーへ開示により、信用力を高める
  • 企業経営にBCPを組み込み、経営と一体化すると共に、継続的な改善を図る
  • 地域社会の経済、雇用、環境の維持に貢献できる

(中小企業庁:中小企業BCP策定運用指針)

上記に加え、首都直下型地震が「30年以内に、70%の確率で、M7.3規模」で発生すると予測されていること及び最近水害が多発していること等を考えること、緊急の経営課題と思います。

2.BCPの全体像

「平常時における準備」(BCP策定と運用)および「非常時における対応手順」を説明します。

1)平常時での準備

①BCP基本方針の立案

何のためにBCPを策定し、日常的に運用するのか、中小企業がBCPを策定・運用することにどんな意味合いがあるのか、経営者ご自身の言葉で、あなたの会社のBCP基本方針として下さい。

②BCPの策定:「3.項」で説明

あなたの会社が自然災害や火災等の緊急事態に遭遇した場合において、事業に不可欠な資産への損害を最小限に止めつつ、中核となる事業の継続や早期復旧を実現するために、平常時から行うべき活動と緊急時における企業存続のための方法、手段等を事前に取り決めておくことが必要となるのです。この計画こそが、これから策定する中小企業BCP(事業継続計画)です。

③BCPの運用(教育・訓練)

BCP策定の途中または一応の目途が立ったところで、従業員へBCP教育を行い、理解を得ることが大切です。実際、災害時等で現場対応するは従業員が主体となります。

緊急事態発生時にBCPが有効に活用されるためには、BCPを策定しただけでは不十分であり、定期的な訓練が不可欠です。

④BCPの見直し(維持・更新)

BCPを実効性の高いものにするには、会社の最新状況を反映すると共に、事業の大幅な変更や社内体制に変更等があった場合、BCPを見直し、変更する必要があります。

2)非常時での対応

緊急事態が発生した場合のBCPの発動手順は次のとおりです。

  1. 緊急事態が発覚したら、初動対応(安全な場所への避難、安否確認、被害状況の確認)を行います。
  2. なるべく速やかに、顧客等へ被災状況を連絡するとともに、中核事業の継続方針を立案し、その実施体制を確立します。
  3. 事業継続方針に基づき、顧客・協力会社向け対策、従業員・事業資源対策、財務対策を併行して進めます。また、地域貢献活動も実施します。
  4. 緊急事態の進展・収束にあわせて、応急対策、復旧対策、復興対策を進めます。

3.BCPの策定方法

BCPを策定するには、BCP策定・運用の全体像を理解した上で、策定する項目及び項目内容を具体化する検討様式(フォーマット)が最低限必要です。以下に主な策定方法を紹介します。

1)中小企業庁:「中小企業BCP策定運用指針」

  • 4つのコース(入門、基本、中級、上級)があり、企業の状況や規模等で選ぶことができます。最初の方は、入門または基本コースがお勧めです。
  • 各コース共に、検討様式(フォーマット)が用意してあります。
  • この中小企業庁方式は様々なガイド・運用方針等の源流となっています。
  • 掲載サイト:http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/

2)NPO法人 事業継続推進機構:「中小企業BCPステップアップ・ガイド」

このガイドは「防災対策の実施」、「簡略BCPの策定」、「本格的なBCPに向けて」の3部で構成されており、ステップアップ方式になっています。

各部には、多くの検討様式(フォーマット)が用意してあり、検討様式毎に「必須項目」「重要項目」「推奨項目」が表示されており、これを参考にして、自社で選択ができます。
掲載サイト:http://www.bcao.org/data/01.html
(自社用には利用できますが、営業等へ利用する場合は制限有り)

4.まとめ

中小企業のBCP策定率は16%程と低い数値に留まっており、首都直下型地震等が発生した場合、壊滅的な被害を受け、事業継続ができないことが想定されます。

BCPの策定率を上げることが急務であり、その際“ボリュームの多い”BCPは作成しないことが肝要です。策定したならば、従業員教育の実施→訓練の実施→見直しを行い、実効性のあるBCPにしていくことが重要です。

 

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