苦情の対応はお客様の「壊れた心の修理」です
- 2019/12/1
- 診断士の視点
苦情は貴重な情報です。
事業をしておりますといろいろなところでお客様からお小言を頂戴することや苦情が舞い込みます。この対応を誤ると会社の信用を失うだけでなく、大きな損失に繋がる場合があります。一度失った信用を回復するには、大変な労力と時間を伴います。失ったお客様が再び戻ってこない例はたくさんあります。社内に何か問題があっても日常のことで社員が気づかないことが多いので改善されることなく放置されます。どのような小さなことでも問題を厳しく指摘をしてくれるお客様は会社にとって大切で貴重な存在なのです。
急がずに丁寧に話を聞く
苦情を持ってくるお客様の多くは感情的になっている場合がほとんどです。苦情で直接来社されたお客様には、応接室に案内し、丁寧な応対でまず高ぶった感情を静めていただきます。そして、このお客様の言い分を丁寧に聞くことです。時には信じられない話の時もあります。しかし、決して「そんなことはない」と否定的な態度で対応をはじめると決して良い結果にはなりません。「忙しいので早く結論だけを聞きたい」という姿勢も示してはいけません。聞く耳を持たない態度は益々感情を悪くすることにもなりかねません。
最初苦情の大きさも内容も分からないことが多いのですが、丁寧に問題を聞かせていただく姿勢を示すことです。苦情の原因はいろいろありますが、当方が実情を十分説明していない場合や説明したつもりでも十分理解されずに誤解が原因のこともあります。このお客様の言い分を丁寧に聞き、お客様がどのようなことで感情を害されておられるのか。何を要望し、怒っておられるのかを正しく把握することです。そして、その苦情の内容に応じた適切な立場の者が応対することです。
日頃より問題の発生がないように社員の教育訓練を徹底することはもちろんですがお客様が話をしやすい風土や雰囲気を醸成することが肝要です。
問題を明確にし、対策を教育材料に
問題は、できるだけありのまま表現していただき、相手の言葉で復唱しながら内容を丁寧にメモします。問題を軽く見ることや握りつぶしてしまうような態度を決して見せてはいけません。話の途中で発言を否定せず言葉を遮らないで聞きます。問題の本質と原因が明確になり、問題の解決と対策に結びつくものです。当方の説明不足で生じた問題は、素直に認めます。問題を前向きに解決し、対策する姿勢を示すことが大切です。もし苦情が誤解によるものであれば、感情的にならないように配慮し、さらに言い訳にとられることを避けて丁寧に説明します。その原因を明確にしたうえで再発防止対策を考えます。問題の再発防止策は社内の全員が共有して再発生の防止を徹底する旨を説明し、相手の方にお礼を申しあげましょう。電話による苦情は、相手の顔が見えないだけにさらに注意が必要です。
お客様の「壊れた心」の修理です
苦情のために来社されたお客様のほとんどは当社に対する「お客様の心」が壊れてしまっているのです。まず話の内容からお客様の心が壊れた原因を確かめます。そして、壊れた心を治すためには何が必要かを聞きとることです。真剣で丁寧な言葉使いや応対がお客様の「壊れた心」を和らげることができます。どの会社も問題の解決に配慮しますがお客様の「壊れた心の修理」までは気が付きません。心の修理ができれば、当方の話も聞いてもらえるようになります。お客様の心が和んだ頃を見て、「他にお気づきのことありませんか」と質問をすればお客様から他社のより良い対応を知ることもできるかもしれません。
このように苦情への対応は、当社に対するお客様の壊れてしまった心の修理なのです。お帰りの時までに当社への不信やわだかまりを完全に払拭し、お客様の壊れてしまった心の修理ができれば最高の対応となります。電話の場合も穏やかに感謝の気持ちを表現して終わることができればすばらしい対応になります。
感謝の気持ちを忘れない
お客様の壊れた心の修理ができれば逆に会社への信頼を高めることができるのです。お客様のお話を丁寧にお聞きし、上手に解決することにより会社の信頼関係を益々強くした例はたくさんあります。適切な対応によりお客様が強力な味方やファンになっていただくこともできます。
苦情があっても何も言わずに会社から黙って去って行かれたお客様はもう帰ってきません。社内の問題の存在も知らされずに対策もできません。黙って離れていかれたお客様は、会社にとって大きな損失なのです。日頃より問題が発生しないように社員の教育訓練を徹底すると共にお客様が話をしやすい風土や雰囲気を醸成することです。そして、起きてしまった問題には、適切に対応し、ご指摘してくださったお客様に心から感謝することを忘れないようにしたいものです。