飲食店のメニューブック作成の「勘ドコロ」
- 2020/4/1
- 診断士の視点
佐藤 純(中小企業診断士)
メニューブックをつくるときに考えること
どんなにおいしい料理を提供していても、それだけではお店は繁盛しません。 お店に対するお客様の評価は、店内の雰囲気や店員のサービスなど、おいしさ以外の要素によっても大きく影響されるからです。
メニューブックも、お客様の評価に大きな影響を与える要素の一つです。 より良いメニューブックをつくるには、なんとなく制作をはじめるのではなく、まずは自分の店についてよく分析をし、整理をしてから行います。 店のコンセプト、業態、客層、客単価などを整理した後、これらを基に総合的に判断して、どんなメニューブックにするのか決定します。 重要なのは、その際にハード面(メニューブックの形式、材質 など)と、 ソフト面(品揃え、商品カテゴリーの分類 など)の2つの観点を切り分けて考えることです。
上記のそれぞれの項目についてもう少し掘り下げて説明したいところですが、話が長くなってしまうので次回以降にお話ししようと思います。
今回の記事では、次に、メニューブックを作る上で最も土台となる部分である「店のコンセプト」について少し書こうと思います。その中で、上記の項目のうちのいくつかに触れながら説明をしていきたいと思います。
店のコンセプト
「コンセプト」は、「モノ」と「コト」を具現化するための基本的な考え方になります。 お客様は、ただ単に“商品の味が美味しい”ということだけではなく、 「材料へのこだわり」や「商品が生まれた経緯」などの情報にも興味を持ちます。 また、お客様は、「その店ならでは料理」を求めています。 あまり手広く商品展開をしてしまうと個性がなくなり、競合他社との競争に巻き込まれてしまうので、「店のコンセプト」で付加価値を高め、差別化を図ることこそが重要なのです。
「店のコンセプト」は、ターゲット層を前提に考えます。 例えば、「比較的所得の高い都心で働く30~40代の女性」をターゲットとした場合、 コンセプトを考えるにあたっては、「ボリューム」、「ジャンク嗜好」というキーワードは支持されないでしょう。
特に女性の顧客は、顧客特性として店全体を「イメージ」で捉える傾向があります。 そのため、商品とサービス、そして店内演出に一貫性を持たせる必要があります。もし、そこに違和感があると、イメージダウンになります。
また、メニューは、「店のコンセプト」と合った商品・価格で構成されるべきです。「店のコンセプト」と「商品」が適合した場合、顧客は少々高い価格であっても納得します。 商品の強みが顧客にしっかりと伝わるよう、店のコンセプトに合った形で商品情報をアピールしていくことがポイントです。
商品のネーミング
店のコンセプトが定まったら、次にコンセプトに合わせて「商品のネーミング」を考えます。 例えば、ターゲットが女性の場合、商品とネーミングが簡潔に一致することが最善かといえば必ずしもそうではありません。商品とネーミングが簡潔に一致することが最善なのは、一般的に中高年男性をターゲットにしている場合が多いです。 多少不明瞭なネーミングであっても、想像力をかきたてる余地のあるネーミングの方が喜ばれまることもあります。
いずれにせよ、実際にネーミングを行うときは、ターゲットの分析(年齢、性別、趣味、行動範囲など)や商品認知の経路(インスタグラム、店内、口コミなど)をよく分析した上で決定します。
商品の見せ方
商品の「見た目のインパクト」も、お客様にとって付加価値となります。 例えば、見た目のインパクトを生む方法として、料理を提供する「食器」に普通はやらないような変化を加える方法があります。
また、「盛り付け」も見た目のインパクトを与え、話題性を作り出す重要な要素です。 シズル感を出すために、食材を不揃いに切る、高さをつけて盛り付けるなどを行います(一般的に生け花を参考にします)。 このほか、インスタグラムに掲載する写真も照明や陰影を調整してシズル感を出したものにするとよいでしょう。
なお、「インスタ映え」するような写真の撮り方にはコツがあります。コツを得れば、そんなに難しいものではありませんが、構図の取り方や光の当て方など少しのアドバイスで大きく改善が図ることができます。
今回はここまで。 今後も、なんらかの経営改善の「気づき」を経営者のみなさまにご提供できれば、と思っております。