変革の時代の経営革新に取り組む

中小企業診断士 髙橋 栄一

危機は10年ごとにやってくる

先日、内閣府は今年4~6月のGDPは、新型コロナウイルスの影響を受けて年率換算では27.8%の戦後最悪の落ち込みであったと発表した。朝日新聞(2020年8月19日付)によると東証1部企業の4~6月決算(1,324社)は、「売上高は20%減少、純利益赤字は3分の1であった」と報道している。

日本経済は、1990年のバブル崩壊以降、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、そして今回の新型コロナウイルス感染の発生と、10年ごとに大きな経済危機に遭遇している。

経済・社会が大きく変わった

国の緊急事態宣言の発令によって、外出自粛や営業休止で、外食やレジャー・イベントをはじめとした支出が抑制された結果、GDPの半分以上を占める個人消費が大幅に落ち込んだ。

個人の生活様式は3密の回避、マスク、手洗い、消毒などの定着によって、今までは人との触れ合いや人との移動を前提にしてきたリアルビジネスは敬遠され、ネットショッピング、テレワークなどの非対面型ビジネスが急速に拡大してきた。

サプライチェーンでは中国などの海外依存の調達が、国内生産に支障をきたす事態となり、国内調達ルートの再構築が始まった。

続々新ビジネスが生まれている

飲食業や小売業、サービス業では今までに考えられないビジネスモデルが続々と新しい取り組みを始めている。例えば、通信販売、テレワーク、オンラインによる診療、商談、結婚式、法要、授業、セミナー、会議などのビジネス、そして飲食品の宅配、持ち帰りなどのビジネスが挙げられる。

このようにリアル店舗での商品・サービス提供方法は変わってきた。

長寿企業は経済危機をどのように乗り越えてきたのか

昨年3~4月に、秦野市の創業100年以上の長寿企業5社を訪問して、過去の経営危機をどのように乗り越えてきたかをお尋ねしたところ、①従業員の協力があった、②取引金融機関の支援があった、③仕入先の協力があったであった。

2019年2月に開催された神奈川県中小企業団体中央会主催の講演会で、秦野市にある老舗旅館の陣屋の女将は「当旅館の強み・弱みを抽出して、コンセプトを『物語に、息吹きを』に設定した。女将や従業員の個人の頭の中にある顧客情報の見える化、事務のペーパーレス化、業績の日次管理などをデジタル化するために夫が旅館専用の管理ソフト(陣屋クラウド)の開発、従業員の多能工化、プライダル事業への進出、不採算部門の廃止などの改革を行い、業績をV字回復させることができた」とのことであった。

今回の難局を乗り越えるための取り組み

中小企業の当面の経営上の問題点は、「売上・受注の停滞、減少」である。

そのためには現状の製品の生産方法や商品・サービスの提供方法の見直しを行い、新型コロナウイルスの影響が少なく、今後伸ばせる余地のある分野にシフトすると共にデジタル化するなどの取り組みが必要である。

(1)最近筆者に補助金申請関連で相談のあった案件は中古車販売のオンライン商談、クリーニング品の宅配便による集配とオンライン決済、和菓子の密封包装による賞味期限の延長とネット販売、新製品をWebサイトの動画で紹介するなどのデジタル化への取り組みが多かった。

(2)新しい取り組みを計画されている方は、下記補助金の活用をお勧めする。

補助事業名 対象となる補助事業 補助率・最大金額 募集締切日
ものづくり補助金4次 新製品・サービス・生産プロセスの改善に必要な設備投資等 ①補助率1/2~2/3
②上限金額10,000千円
9/1~11/26
持続化補助金 小規模事業者経営革新計画を作成して販路開拓等の取り組み ①補助率2/3~3/4
②上限金額500~1,000千円
①3次:10/2
④4次:2/5
IT導入補助金(8次) ITツール導入による業務効率化等 ①補助率1/2~2/3
②上限金額300~4,500千円
9/30
神奈川県再起型促進補助事業 ①非対面型ビジネスモデル構築事業 ・感染症拡 大防止事業、②ITサービス導入事業、③生産設備等 導入事業 ①補助率3/4
②上限金額1,000~2,000千円
8/3~10/30

(3)ものづくり補助金申請の審査加点を得たい、政府系金融機関から低利融資を受けたいとか企業の社会的知名度を上げたいなどをお考えの方は「経営革新計画承認」の手続きをお勧めする。

この制度は中小企業等経営強化法に基づき神奈川県知事に申請するもので、下記要件を満たすことが必要である。

該当する取り組み事業は
 ① 新商品の開発又は生産
 ② 新役務の開発又は提供
 ③ 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
 ④ 役務の新たな提供の方式の導入・その他の新たな事業活動
である。

そして経営目標は
 ① 付加価値—年率3%アップ
 ② 経常利益—年率1%アップ
の2つが設定されている。

事業の継続のために、今こそ現状の見直しを行い、新しい取り組みを補助金や経営革新計画を活用して、実現しよう。

筆者は「10月14日(水)18:30から、川崎市振興財団で当テーマによるセミナー」を開催しますので、ご参加ください。

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