法人営業(BtoB)における工夫のポイント
- 2020/10/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 青木 航
新型コロナウィルス感染症の影響について
新型コロナウィルス感染症の影響で売上の減少など、経営上の問題点を抱えている事業者は増加しております。川崎市内の事業者においても同様です。令和2年4月~6月期の調査によると、「売上の停滞・減少」と「利幅の縮小」が今期の経営上の問題点の上位2項目でした。(川崎市商工会議所 「地域経済動向調査レポート」より)
これらの問題を乗り越えるために、様々な対策を講じているかと思いますが、今回は法人営業(BtoB)における工夫についてお示し致します。
法人営業(BtoB)に必要なプロセス
需要の低下や競争が激しくなる環境下では、今まで以上に営業活動の工夫が求められます。営業活動というと、どうしても見積書(価格設定)やプレゼンテーションスキルなどに意識が向きがちです。しかし、見積書やプレゼンテーション以上に大切なのは、そこにいきつくまでの過程です。営業活動にはいくつかの過程があります。その過程を大きく、「事前準備」「提案活動」「契約・納入」の3つのプロセスに分解し、これらの中でも重要なのが事前準備過程です。
今回は、事前準備過程の工夫についてご案内させていただきます。
営業活動における「事前準備」とは
ここでお伝えする「事前準備」とは、事前に何か難しい分析や調査をするわけでありません。面談をする前にできる限り相手のことを知るための準備活動をしておくことです。最終的には、マーケットインの発想で相手が求めていることを把握し、それらに対応していくことで価値の高い(競争力の高い)提案に繋げていくことを目的とします。
相手が求めていることを知るためには、相手のことを知ることがとても必要です。当たり前のことのようですが、これらを体系的に整理し営業活動へ埋め込み、工夫することで今までと違うアプローチが可能となります。
相手のことを知るために、できることの一例を以下に示します。これらは、事前に調査可能なものも多数ありますので、可能な項目は事前に調査することが必要です。
【事前準備の例】
- 企業概要
- 経営理念や行動指針
- 組織図
- 取扱商品
- 主要取引先
- 競争相手
- 市場情報 など
そして、実際の面談を通じて不明な点を補完しながら顧客理解を深める過程がとても重要です。
悩みごとを共有する
顧客の理解が深まってくると、「この企業は、○○○のような課題を抱えているのではないか」といった仮説を立てることができます。立てた仮説は、面談を通じて検証、修正を行い、それらを繰り返すことで相手が求めているものへ近づくことが可能となります。結果として、価値の高い(競争力の高い)提案となっているはずです。
逆にこれらの「事前準備」の過程がない状況を想像してみてください。提示した見積書やプレゼンテーションは、激しい競争環境に置かれている可能性が高いのではないでしょうか。
コロナ禍における営業活動
新型コロナウィルス感染症の影響で、今まで当たり前のように行っていた対面での営業活動にも制約が多くなってきます。今後は、非対面の営業活動にも対応していかなければなりません。既に非対面営業ツールとしてWeb会議システムを導入している事業者も多いかと思いますが、それらの利用についても工夫が必要です。
Web会議で想定される問題点として、対面での営業活動と比較して「商談が進まない」や「うまく成約に至らない」とが考えられます。非対面での営業活動は、コミュニケーションにおける制約やIT機器の制約もあるので、対面での営業活動以上にWeb会議を開催するにあたっての事前準備が必要です。
具体的には面談に向けて、事前に面談テーマの設定や目的を明確にすることに加えて、目標所要時間や参加者名・人数をあらかじめ共有しておくことも効果的です。そして、一番重要となるのが、面談時に共有するドキュメントを作成することです。口頭だけではなく、ドキュメントとして共有することでお互いの理解度は深まります。
更に、これらのドキュメントを議事録とすることで、次回面談時の活用資料や社内での共有ツールにも変換可能です。非対面での営業活動においても工夫や改善を積み重ねていただくことをお勧めします。
最後に
企業は様々な外部環境変化(市場の変化)に対して柔軟に対応することが求められます。昨今の新型コロナウィルス感染症の影響で、それらは今まで以上に必要となってくることが予測できます。
今回は、法人営業(BtoB)における事前準備で「相手のことを知ること」の必要性についてご案内しましたが、相手企業も外部環境変化(市場の変化)に対応するための施策を検討しているはずです。事前準備の段階で、相手の立場に立って情報収集することでより良い関係構築の一助となるのではないでしょうか。