ITツールを活用してDX化に踏み出そう
- 2022/12/1
- トピックス
中小企業診断士 西岡 健太郎
1.小規模事業者のIT活用状況
昨今、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を聞かない日はなくなりましたが、皆様の会社ではITを上手く活用することが出来ていますか。「ITを使えば便利なのはわかるけど、なんか難しそう・・・」、「デジタル化って何から取り組めばいいの?」、「どんなITツールがあるかわからない」、「ITに対応できる社員がいない」など、IT活用に高いハードルを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、規模の小さな事業者の間でも、現在はIT化の動きが着実に進展しています。2022年度版「小規模企業白書」によると、コロナ以前の2019年時点に比べてデジタル化の進展が進んでいる事業者の割合が増えています。新型コロナウイルス流行を契機に、業務効率化やデータ分析に取り組んだ小規模事業者の割合は約半数となっており、この動きは引き続き継続していくことが予想できます。
2.DXとは
経済産業省は、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
この定義によると、DXは「IT技術を活用して製品・サービスやビジネスモデルを変革すること」を最終目標としていますが、これまでIT利用を推進して来なかった事業者がいきなりこの目標を達成することは困難です。まずはITツール等を活用して、既存業務の効率化や販売促進の工夫などに取り組んでいただくことが、DX化の第一歩になるかと思います。
3.DX化の段階
DX化には、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」という3つの段階があります。
- デジタイゼーション
経済産業省は、デジタイゼーションを「アナログ・物理データのデジタルデータ化」と定義しており、部分的にアナログ情報をデジタルデータ化することを指します。デジタル技術を導入することで、既存業務を効率化したり、コスト削減したりすることをイメージしていただければよいと思います。例えば、「これまで紙で管理していた情報を電子化して、データベースや表計算ソフトで管理する」などがこれに当たり、これまでアナログな経営管理を行なってきた会社がDX化するための最初のステップと言えます。 - デジタライゼーション
経済産業省は、デジタライゼーションを「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」と定義しています。特定の既存業務を丸ごとデジタル化してしまい、業務効率を劇的に高めたり、新しいサービス・価値を生み出したりすることを意味します。例えば、「MAツール(営業自動化ツール)を導入することで、顧客一人一人に合わせた提案を最適なタイミングで行う」などがこれに当たります。 - デジタルトランスフォーメーション
経済産業省は、最終段階のデジタルトランスフォーメーションを「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革」と定義しています。近年、キャッシュレス決済が普及し、財布を持ち歩かなくとも買い物ができるようになりましたが、これもデジタルトランスフォーメーションの一例と言えるでしょう。
4.DX化に向けた最初の第一歩
まずは、既に世の中にたくさん存在するITツールを活用して、既存業務を効率化するところから取り組んでみてはいかがでしょうか。ITツールを上手く活用することで、業務の効率化・省人化を進めることができたり、効果的な販売促進を行えたり、これまでなかった新しいサービスを作ったりすることが可能となります。特に、人材など経営資源が乏しい小さな事業者ほどITツールを活用するメリットは大きくなります。
—-
【ITツールの例】
- RPA:ロボットによる業務の自動化ツール。WEBサイトからの情報収集や顧客情報の自動管理、電話・メールのサポートなど、人間の判断が必要ない業務を自動化することができる。
- CRM:顧客情報を管理するためのツール。顧客の属性や行動履歴、コミュニケーションの履歴をシステムで一元管理することで、顧客一人一人と良好な関係を築くことができる。
- グループウェア:スケジュール管理、コミュニケーション機能(メール・チャット)、書類管理、経費精算、タイムカードなど、業務に関わる幅広い機能を搭載するITツール。
—-
ITツールを選ぶ際は、「クラウドサービス」の導入をまず検討いただければと思います。クラウドサービスとは、インターネットを介して利用できるソフトウェアのことで、インストールやサーバー構築作業は不要です。インターネットに接続できる環境と、ブラウザさえあればすぐに利用することができます。
クラウドサービスは外部システムとの連携が容易なことも特徴の一つです。例えば、クラウド会計システムは、銀行口座やクレジットカードの情報を取り込むことができ、仕訳をほぼ自動で作成することができます。
低価格で利用できるものも多く、無料お試し期間が設けられている場合がほとんどです。まずは、気軽に試してみて、自社の経営課題解決や業務効率化に役立つツールを探してみてください。
「そう言われても、ITが得意な社員がいない」、「自社の課題に対応するツールがわからない」など、自社だけでITツールの導入を進めるのが難しい場合は、まず専門家にご相談いただければと思います。自治体等が設置している公的な経営相談窓口であれば、無料(または低額)で相談に応じてもらうことができます。
5.IT活用をサポートする支援施策
ITツールの導入には、一定の費用負担が必要ですが、それをサポートする補助金もあります。その一例として、「IT導入補助金」をご紹介します。
・IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業等がITツール(パッケージソフト、クラウドサービス等)を導入する際の購入費用や初期費用等を支援するものです(クラウドサービスの場合は、最大2年間の利用料を補助)。今年度(2022年度)は、「通常枠(A・B類型」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠」の募集枠があり、枠ごとにそれぞれ利用目的や対象となるツール、補助率、補助上限額が異なります。
補助金の対象になるツールは、補助金事務局より認定を受けたもののみとなります。導入したいITツールが決まっている場合は、補助の対象となっているかあらかじめ調べておきましょう。IT導入補助金のサイトで、登録されているツールを検索することができますし、ツールを提供するITベンダーに直接確認してもよいでしょう。
IT導入補助金の詳細は、下記のIT導入補助金HPでご確認ください。
【IT導入補助金HP】https://www.it-hojo.jp
■経営課題解決セミナーのお知らせ
川崎中小企業診断士会では、川崎市産業振興財団と共催で、「新たな挑戦の時代の持続可能な企業経営」というテーマで全6回の経営課題解決セミナーを開催しております(詳細・申込方法はこちら)。
第4回は「やさしく役に立つITツール入門」というタイトルです。
日時: 2023年1月19日(木) 15:00~17:00
場所: オンライン開催
参加費: 無料
詳細ならびに申込方法はこちらをご覧ください。