意外と知られていない!?川崎市の施策

中小企業診断士 島谷 健太郎

当会のある川崎市は来年市政100周年を迎えるが、実は中小事業者向けの様々な市の施策があるのはご存じだろうか。今回特に事業者に分かりやすい、活用しやすい施策を紹介していきたい。

§働き方改革・生産性向上推進事業補助金

国が働き方や生産性向上について掲げるようになって10年近い。川崎市でも市内事業者の働き方改革や生産性向上の必要性により、平成30年度より市内中小事業者等の生産性向上に資する取組を支援するための補助金の公募がなされており、今年度も予定されている(今年度は5月中旬の時点ではまだ公募がされていない)。

なお、川崎市の補助金では、ワンデイコンサルティング同様、中小企業基本法で定められる業種以外にも、医療法人や社会福祉法人、NPO法人等幅広い事業者が対象となっているのも特徴の一つである。ただし、市内に事業所を有して1年以上事業を営む中小事業者であること等の要件もあるので、必ず公募要領の確認はされたい。

  • デジタル化推進支援

主にソフトウェアの導入や、キャッシュレス端末等のICT機器導入を対象とする。

昨年度まで生産性向上ICT活用支援という名称だったものである。例えば、運輸業において従来、急な依頼に対しドライバーの位置情報を電話で把握する等煩雑な作業が生じていたところ、位置・運行情報を把握できるシステムを導入し、リアルタイムでの当該情報の把握による効率的な配車を図られるようになったケースもある。また、工事業において、従来紙ベースの請求処理や管理のため、経理書類の発行や確認に膨大な時間がかかる、かつ、慣れた社員しかできない事務作業に対し、クラウド型アプリ開発システムを導入し、自動で経理書類を発行することにより作業時間の短縮や、複数人で作業する体制とすることができ業務の平準化を図られたケースもある。

  • 先端設備等実践導入支援

主に製造・生産設備導入等による働き方改革・生産性向上に関する取組に要する経費を対象とする補助金である。

主にモノの製造・生産に係る業種が対象となるが、補助金の対象事業者には上述の通り、製造業でない業種も多い。何を補助対象にできるかの具体的なところは、川崎市に尋ねた方がよいだろう。

以下の「デジタル化推進・人材育成支援」、「中核人材育成支援」については、今年度新設された補助金である。生産性向上に向けたソフトウェア等の導入に併せて、それを効果的に活用する人材を育成する経費に充てられる補助金、あるいは、デジタル化等課題の解決を図る人材を育成の経費に充てられる補助金のようだ。

  • デジタル化推進・人材育成支援
  • 中核人材育成支援

2030年で最大約80万人もIT人材が不足するとの経産省の公表があるが、とりわけ中小事業者のIT人材は絶対的に不足しており、このような補助金があるのは市内事業者にとって朗報ではないだろうか。

本記事の執筆時では公募はこれからであり詳細な不明ところも多い。関心のある方はやはり川崎市に尋ねていただいた方がよいだろう。

§創業時にかかる融資制度

昨年度一年間で当会が担当したワンストップ経営相談窓口(毎週火~木)の相談記録によると、約4割が創業相談または創業融資に係る相談であった。振り返ると一昨年度のコロナ禍でも、個人的な印象としても’20年度や’21年度に比べると当窓口の創業相談が増えていたように感じる。 事業運営に携わる方やその支援者は皆理解されているように事業運営にお金の悩みは尽きない。とりわけ創業時に余裕と言える程のある資金をもっている方はほとんどいないだろう。少なからず創業時に金融機関から借り入れを行うことがあるが、そういった創業者のためにも、川崎市の創業融資にかかる施策は知っておきたい。

  • 創業支援資金(アーリーステージ対応資金、女性・若者・シニア起業家支援資金)

筆者の経験上、金融機関が借入時書類の添削依頼で本制度が活用されることもあるが、創業時には金融機関の担当者がいない場合もあるため、支援者から本制度の活用を提案するのもよいだろう。

その他、今年度4月から「スタートアップ創出促進資金」という川崎市の新しい融資制度もできた。保証料率の負担があるものの、経営者保証が不要、あるいは、自己資金の多寡によって融資利率が変わる等の特徴があるので、創業者の支援者はこちらも頭に入れておくのがよいだろう。

§その他川崎市の施策

川崎市にはその他にも様々な施策があるが、ここでは以下を紹介したい。

  • かわさきSDGsパートナー制度
    SDGの達成に向けて取り組む企業等を登録・認証する制度で、市入札契約制度の「主観評価項目制度』における加点※にもなる(※:ゴールドパートナーが対象)。
  • かわさき☆えるぼし認証制度
    女性の活躍推進やワーク・ライフ・バランスの推進に積極的に取り組んでいる事業者を対象とする。認定されると公共調達の入札等において利用する主観評価項目点を付与されるメリットもある。
  • かわさきマイスター(事業)
    極めて優れた技術・技能を発揮して産業の発展等を支える「もの」をつくりだしている現役の技術・技能職者を市内最高峰の匠「かわさきマイスター」に認定する制度である。認定されると市等の広報誌やWebサイトで掲載等される。

上記の川崎市の施策を知らない事業者を支援する場合には、事業者のPRにもなるため是非紹介・提案をしてみるのがよいだろう。

こういった市の施策情報は、事業者としても支援者としても、川崎市の配信する「ビジネスサポートかわさき(Bizかわ)」(https://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000088084.html)等でキャッチしておきたいものだ。 その他、デジタル技術を活用して新しい価値を創出し、市内事業者に展開できるようなモデル作りの事業企画を募集することもこれから予定されている。このように川崎市には中小事業者向けの施策は多く、ここでは紹介しきれない程であるが、上述した施策が市内事業者の一助になれば幸いである。

関連記事

Change Language

会員専用ページ

ページ上部へ戻る