窮すれば通ず

中小企業診断士 足立 秀夫

「易経」という中国の古典は内容が難解であるにもかかわらず、わが国では江戸時代以来、学者から庶民にいたるまでそれぞれの流儀で愛読されていました。

易経に「窮すれば変じ、変ずれば通じ、通ずれば久し」とあります。ふつうは間を省略して「窮すれば通ず」の短い言葉でよく知られています。その意味は、おおよそ次のようなものです。

「ものごとが究極まで進行して行き詰まると、そこに変化が生じてくる。変化が生じてくると新しい道が開けてくる。そして長く続けられる。」

ここで語られているのは、「逆境は長く続かない。いずれ情勢に変化が起こって活路が開けてくる」ということですが、経営の場においても「逆境に変化の時を待つ」ということが大事な前提になりそうです。ただ何もせず待っているのではなく時の変化を見抜き、変化をチャンスと捉えて経営を革新し、自己変革していくことがきわめて重要なポイントとなります。

松下幸之助氏は「不況心得十訓」を提唱し、その中で次のように言っています。

「かつてない困難、かつてない不況からは、かつてない革新が生まれる。それは技術における革新、製品開発・販売・宣伝・営業における革新である。そして、かつてない革新からはかつてない飛躍が生まれる。不況、難局こそ何が正しいかを考える好機である。不況の時こそ事を起こすべし。」

逆境にあっても自分で限界を決めて委縮したりすることなく、ピンチをチャンスに変える発想の柔軟性が、経営者には重要です。プラス思考の柔軟な考え方と限りのない闘争心が起死回生の原動力となるのです。

易経は英語訳では「book of changes」、直訳すると「変化の書」です。現代においても中小企業を取り巻く経営環境は大きく変化しています。逆境とまではいえないまでも景気低迷がながく続いています。こうした時こそリスクを認識した上で新しい事業への取り組みに向けて大胆にチャレンジしていただきたいものです。

以上

関連記事

Change Language

会員専用ページ

ページ上部へ戻る