2024年問題と地産地消の促進
- 2023/12/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 武田 良樹
1.働き方改革関連法と2024年問題
2024年4月1日施行の働き方改革関連法によって、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限は960時間に制限されるようになります。トラックドライバーの労働環境は慢性的長時間労働が問題でしたが、これにより一定の歯止めがかかることになります。
ところが、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、ものが運べなくなる等の可能性が懸念さており、これが「物流の2024年問題」と言われています。もともと、物流業界では若手不足と高齢化により労働力が不足しているのに加え、宅配便の増加によって長時間労働が常態化しています。トラック会社の7割は人手不足を感じている(週刊エコノミスト2023年10月31日号「特集 運転手が足りない!」より)そうです。
また以下の調査結果によれば、同法が施行されると3割~4割のトラック会社では何らかの対策が早急に必要になると考えられます。
2.2024年問題への取り組み
2-1.企業の取り組み
トラックドライバーの労働時間には運行時間の他に着発荷主での待ち時間、積み込みや荷下ろしの時間などが「拘束時間」として含まれます。
私のような物流の専門家でもない者が申し上げるのは心苦しいのですが、物流の効率化によりこれらの時間を減らしていく必要があり、
- 大局的には企業の垣根を越えて、あるいは企業の垣根をバーチャルでなくすようなDXの推進に全国規模で取り組むこと
- 荷主のオーダーに対しベストな対応案を速やかに提供できるような社内DXを推進し、荷主との素早いコミュニケーションを通じ効率的な配送計画を作成可能にすること
以上がとても大切なように思います。
2-2.草の根の取り組み
翻って、消費者目線で2024年問題を考えた時に、課題解決のために少しでも貢献できることはないのでしょうか。
英語のエシカル(倫理的な)という形容詞を使った用語で「エシカル消費」という言葉があります。国の消費者基本計画では「地域の活性化や雇用などを含む、人や社会・環境に配慮して消費者が自ら考える賢い消費行動」とされています。要するに、地球環境や社会貢献に配慮したモノやサービスを積極的に消費する行動のことです。関連するキーワードとして「エコ消費」「フェアトレード」「チャリティー消費」「地産地消」など、皆さんもお聞きになったことがある用語が含まれているのではないでしょうか。
ここでは「地産地消」を取り上げて考えてみます。
3.地産地消
地産地消とは、地元で育てられた食料や栽培された食材を食べることです。これによってフードマイレージが短くなります。フードマイレージとは「食料の輸送量(t)と輸送距離(km)を掛合わせた指標です。
日本の食品流通においては自動車による輸送が圧倒的に多く、地産地消によりフードマイレージを小さくすることは2024年問題という課題解決に少しでも貢献できると思います。
貢献という意味では、経済的側面からは安全、安価さらに地域経済の活性化が挙げられます。環境的側面からは物流エネルギー量の削減、温暖化防止への貢献が期待できます。
また文化的にも地域の伝統野菜や伝統加工品の継承といった側面が挙げられます。
4.神奈川にて
元来ここ神奈川は農業が盛んであり、地場野菜を積極的に扱う地元の飲食店や小売店もあります。例えば野菜の地域ブランドとして「鎌倉野菜」、またそれぞれの伝統野菜、地方野菜が数多くあります。大根を例に取りますと、三浦大根、波多野大根、鎌倉大根、寺尾二年子(てらおにねご)大根といったところです。
これら地域固有の食材を次世代に繋ぐための意識的な地産地消への取り組みは、まさにエシカル消費と言っていいと思います。
さらに、これまでは規格外品として捨てられていた農産物を、保存可能な伝統食やオリジナル食品に加工し販売すること(6次産業化=1次産業:農林漁業×2次産業:食品加工×3次産業:流通販売)によって地域経済を豊かにしていこうという取り組みも活発に行われています。例えば、湘南ゴールド、小田原のキウイフルーツや津久井在来大豆のジュレなどの加工品があります。また歴史のある所では「足柄茶」なども6次産業化の好例です。
そして、地産地消では地域の特色を生かした商品開発を促進するばかりでなく、観光産業との連携が進むことで横浜、箱根、丹沢などの地域の魅力が増し、観光客の増加も期待できるのではないでしょうか。 皆様におかれましても、是非地産地消をほんの少し意識することで2024年問題の課題解決に貢献してみませんか。