小規模事業者持続化補助金の概要と作成のポイント
- 2024/3/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 齋藤 洋二
はじめに
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
ここでは、小規模事業者の方よりご相談の多い、小規模事業者持続化補助金の概要と申請資料「経営計画書兼補助事業計画書①」、及び「補助事業計画書②」の作成方法とポイントについて説明いたします。
■概要
《商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金ホームページ内の「ガイドブック」をご参照ください》
※以下は、現在公募中の第15回の公募要領に沿った内容となっています。「補助率・補助上限額」、「対象経費」、「特別枠」などは、各回で異なる場合がありますので、申請される回の公募要領やガイドブックで必ずご確認ください。
(1)対象者
以下の表1に該当する法人、個人事業主、特定非営利活動法人が対象です。また、以下以外に満たす要件がありますので、ガイドブックでご確認ください。
(2)補助率・補助上限額
以下の表2のとおりとなっています。
例えば、インボイス特例対象の事業者様が、通常枠で申請される場合は、補助率が2/3で、 補助上限額は、「通常枠50万円」+「インボイス特例50万円」=100万円となります。したがって、150万円の経費の2/3の100万円を上限として、補助金を活用できます。なお、補助率、補助上限額、特別枠、特例の設定は、各回で異なる場合がありますので、申請される回の公募要領やガイドブックでご確認ください。
※特別枠の申請要件についても、ガイドブックでご確認ください。
(3)対象経費
以下の表3の通りとなっています。
※ウェブサイト関連費は、補助金総額の1/4(最大50万円)を上限とし、ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。
※設備処分費は、補助対象経費の総額の1/2を上限とし、設備処分費のみによる申請はできません。
※他にも注意事項がありますので、ガイドブックでご確認ください。
■申請資料作成のポイント
以下に、申請資料「経営計画書兼補助事業計画書①」、及び「補助事業計画書②」の作成方法とポイントについて説明いたします。なお、以下のサイトには、申請資料の記載例が掲載されていますので、合わせてご確認ください。
□全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金ホームページ内「申請について」
https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/shinsei.html
□ミラサポplusホームページ内
「経営のヒント/補助金虎の巻/小規模事業者持続化補助金「経営計画・補助事業計画」の書き方」
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/6666/
★ポイント:
◆適度に画像、図、表を挿入してください。
◆長々と文章にはせず、箇条書きにし、見出し記号(■、〇、●、(1)、①等)や
かっこ(【】、《》等)を適切に使用してください。
◆強調したい部分のみ、アンダーライン、太文字、色文字を適度に使用してください。
(1)経営計画書兼補助事業計画書①
まず、「経営計画書兼補助事業計画書①」と「補助事業計画書②」の関係性ですが、「経営計画書兼補助事業計画書①」は、自社の外部環境・内部環境を踏まえた、会社全体としての今後の経営方針・経営目標と今後のプランの計画書で、「補助事業計画書②」は、その計画に沿って今回補助金を活用して行う販路開拓や生産性向上の取組の計画書となります。
「経営計画書兼補助事業計画書①」の記載項目は、以下の4項目です。
①企業概要
- 基本情報:創業年、所在地、従業員数など
☆社屋・店舗の画像を挿入 - 事業内容:商品・サービス、対象顧客、販売経路など
☆商品・サービスの画像を挿入 - 業績情報:売上や利益の構成比、ここ数年の推移など
☆数値の入った表を挿入 - その他情報:経営課題など
★ポイント:
自社の経営状況・経営課題を把握していることを主張してください。
②顧客ニーズと市場の動向
- 自社が属する業界全体の動向、市場(商圏)規模推移など
☆インターネット検索で適切なデータを探し、グラフを挿入
※地域経済分析システム(RESAS:リーサス)も適宜ご活用ください。
https://resas.go.jp/ - 自社の顧客のニーズ
- 業界・顧客ニーズの変化とビジネスチャンス、競合の動向など
☆関連するデータ、グラフがあれば挿入
③自社や自社の提供する商品・サービスの強み
- 提供する商品・サービス:品質、技術、価格、品揃え、付加価値など
☆表現できる画像があれば挿入 - 付加サービス:接客・顧客対応、スピードなど
- 人材:経営力、技術力、営業力など
- 設備:生産設備、オフィス環境、立地など
☆表現できる画像があれば挿入
★ポイント:
自社の強みを把握していることを主張してください。
④経営方針・目標と今後のプラン
今後3年程度を想定した以下の事項を記載してください。
- 経営方針:新たに狙う市場や顧客、新たに行う事業・業態など
☆現状と比較した図があれば挿入 - 経営目標:売上・利益・受注件数などの目標数値
☆年度別目標数値の表を挿入 - 今後のプラン:経営方針・目標を達成するための導入プラン(実施時期、具体的内容)
☆図式化できるものがあれば挿入
★ポイント:
自社の「強み」及び「対象とする市場(商圏)・顧客の特性」を踏まえた経営方針・目標、今後のプランとなるよう組み立ててください。
(2)補助事業計画書②
「補助事業計画書②」の記載項目は、以下の4項目です。
「経営計画書兼補助事業計画書①」でまとめた、「経営方針・目標と今後のプラン」に基づいて、今回申請する小規模事業者持続化補助金を使用して、何に取組むのかを記載します。
①補助事業で行う事業名
今回の取組のタイトルを30文字以内で記載します。
②販路開拓等(生産性向上)の取組内容
- 新たな市場参入のための新商品・新サービスの開発、新たな販売方法・販売促進など
取組事例イメージ:
・新商品を陳列するための棚の購入
・新たな販促用チラシの作成、送付
・新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告等)
・新たな販促品の調達、配布
・国内外の展示会、見本市への出展、商談会への参加
・新商品の開発
・新商品の開発にあたって必要な図書の購入
・新たな販促用チラシのポスティング
・国内外での商品PRイベントの実施
・新商品開発にともなう成分分析の依頼
・店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良、飲食店の店舗改修を含む。) - 取組内容における競合他社との差別化ポイント、創意工夫した点
- 取組に必要な費用項目と金額
- 取組の実施項目とスケジュール
★ポイント:
◆より具体的に、また、実現可能性の高い内容となるようにしてください。
◆「経営計画書兼補助事業計画書①」でまとめた、「経営方針・目標」を達成するために必要であることを主張してください。
◆「経営計画書兼補助事業計画書①」でまとめた、「今後のプラン」と整合性があり、かつ、必要であることを主張してください。
◆大企業では対応しづらい、小規模事業者ならではの創意工夫点が取りこまれていることを主張してください。
◆可能であれば、ITを有効活用した取組としてください。
◆費用は取組に必要なもののみで、積算は正確なものとしてください。
③業務効率化(生産性向上)の取組内容
上記「②販路開拓等(生産性向上)の取組内容」と合わせて行う業務効率化(生産性向上)があれば、それにかかる費用も補助対象となりますので、ここに記載してください。
業務効率化には、「サービス提供等プロセスの改善」及び「IT利活用」があります。
※任意記入の項目なので、ない場合は空白で結構です。
- 「サービス提供等プロセスの改善」の取組事例イメージ:
・従業員の作業導線の確保や整理スペースの導入のための店舗改装 - 「IT利活用」の取組事例イメージ:
・新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する
・新たにPOSレジソフトウェアを購入し、売上管理業務を効率化する
・新たに経理・会計ソフトウェアを購入し、決算業務を効率化する
④補助事業の効果
- 定量的効果:売上、利益、受注件数など
☆数値化は必須です。 - 定性的効果:訴求力・認知度の向上、地域雇用の促進、地域活性化など
- 補助事業を行うことが効果に結びつく理由
(○○なので、○○ができる・○○につながる)
以上は、審査のポイントを押さえた内容となっています。
ガイドブック11ページに記載されていますので、ご確認ください。また、同じ11ページには、「加点一覧」が記載されています。加点がある方が採択されやすいので、該当するか事前にご確認いただき、申請時に忘れずに申告するようにしましょう。
以上、小規模事業者持続化補助金の申請資料の作成方法とポイントについて説明いたしました。申請時の参考としていただければ幸いです。
【参考】
■商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金ホームページ
https://s23.jizokukahojokin.info/
■全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金ホームページ内「申請について」
https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/shinsei.html
■ミラサポplusホームページ内
「経営のヒント/補助金虎の巻/小規模事業者持続化補助金「経営計画・補助事業計画」の書き方」
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/6666/