経営改善計画策定事業の概要と経営改善計画策定のポイント
- 2024/8/1
- 診断士の視点
中小企業診断士 西 秀幸
1.経営改善計画策定事業の概要
経営改善計画策定支援事業(通称:405事業)は、中小企業・小規模事業者の経営改善を支援する国の制度です。国が認定する士業等専門家(認定経営革新等支援機関)認定経営革新等支援機関が中小企業等の依頼を受けて経営改善計画策定支援を行うことにより、中小企業等の経営改善を支援します。
認定経営革新等支援機関の支援を受けて経営改善計画策定等をする場合、認定経営革新等支援機関に対する支払費用の一部を、47都道府県に設置された中小企業活性化協議会が支援しています。急速な円安による原材料や燃料代の高騰などの環境変化等に十分対応できておらず、借入金の返済負担等の財務上の問題を抱えている中で、自ら経営改善計画等を策定することが難しいとお悩みの事業者の皆様は、経営改善計画策定支援事業を活用して、自社の経営改善を行ってみてはいかがでしょうか。
①経営改善計画策定事業の目的
主要な目的は、中小企業の経営基盤を強化し、競争力を向上させることです。日本経済の中核を担う中小企業が抱える経営課題を解決し、持続可能な成長を促進するために、この事業は重要な役割を果たしています。特に、経営改善が急務である企業に対して、専門的な支援を提供することで、経営の効率化と安定化を図ります。
②対象事業者
対象となるのは、中小企業基本法に基づいて定義された中小企業です。中小企業とは、具体的には、製造業、建設業、運輸業では従業員数が300人以下、商業やサービス業では従業員数が100人以下の企業が対象となります。
③支援内容
支援内容は多岐にわたります。主な支援内容は以下の通りです。
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- 現状分析: 専門家が企業の現状を詳細に分析し、経営課題を特定します。
- 計画策定支援: 企業の特性や市場環境を考慮した経営改善計画の策定を支援します。
- 実行支援: 計画の実行段階でのフォローアップやアドバイスを提供します。
- 資金調達支援: 必要な資金の調達をサポートし、金融機関との連携を支援します。
④費用と事業者負担の補助
国が認定する士業等専門家等(認定経営革新等支援機関)の支援を受けて経営改善計画を策定する場合、その費用の一部について補助金専門家に対する支払費用の3分の2(通常枠:上限300万円)を中小企業活性化協議会が支援します。
経営革新等支援機関とは、専門的知識と実務経験を持つ認定支援機関(例:中小企業診断士、税理士、弁護士等)です。
2.経営改善計画書の内容と作成のポイント
経営改善計画書の内容は、事業概要、ビジネスモデル俯瞰図、資金実績・計画表、アクションプランなどが含まれます。経営改善計画書のサンプルが中小企業庁のホームページ上で公開されています。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/05.html
経営改善計画を効果的に策定し、成功に導くためにはいくつかの重要なポイントがあります。以下に、計画策定のプロセスと各段階での重要なポイントを説明します。
①現状分析
計画策定の第一歩は、企業の現状を詳細に分析することです。これには、財務状況の把握、業務プロセスの評価などが含まれます。
②ビジョンと目標設定
現状分析に基づいて、企業の将来像を明確に描きます。これには、企業が目指すべきビジョンと具体的な目標設定が含まれます。
③計画策定
目標達成に向けた具体的な改善施策を策定します。ここでは、具体的な行動計画や経営資源の配分、スケジュールを明確にします。
④実行とモニタリング
策定した計画を実行に移します。この段階では、計画の進捗を定期的にモニタリングし、必要に応じて調整を行います。モニタリングは、3年間行われます。計画の実行過程で得られるフィードバックを基に、継続的な改善を図ります。PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回しながら、計画の効果を最大化します。
3.成果と効果
①経営の健全化
認定経営革新等支援機関の専門家による第三者視点の経営アドバイスが聞けるため、自社内だけでは気付けなかった課題や解決策が可視化されます。また、経営改善計画を実行することで、財務体質の強化や、業務効率の向上などを図ることができ、企業の経営が健全化して持続可能な成長が期待できます。
また経営改善計画策定後の3年間は認定支援機関によるモニタリングが受けられることから、計画して終わりではなく実行性が高まるため、さらなる業績改善も期待できます。
②資金繰りの安定化
金融機関に対する返済条件などの変更などの金融支援を受けることにより、資金繰りが安定化します。資金繰りが安定化すると本業に集中できるようになります。
③経営者・従業員の意識向上
経営改善計画策定を通じて、経営目標が明確になることで経営者自身の経営に対する意識が高まります。また従業員と企業の方向性を共有することにより従業員のモチベーションアップにつながり組織全体の一体感が強まります。
4.まとめ
経営改善計画策定事業(405事業)は、企業が直面する多様な経営課題を解決し、競争力を強化する助けとなります。経営改善計画の策定においては、現状分析、ビジョンと目標設定、計画策定、実行とモニタリングの各ステップが重要であり、これらを着実に進めることで、企業の持続的な成長と発展が期待できます。既に多くの企業が経営改善計画策定事業(405事業)を利用しています。
当診断士会も認定経営革新等支援機関に登録されています(認定支援機関ID:105114002320)ので経営改善計画の策定に関心が持たれた方は当診断士会にご相談ください。