健康食品(サプリメント)業界の現状

中小企業診断士 柴原 廣次

1.健康食品(サプリメンント)摂取による健康被害の事例

消費者の健康志向、とくに高齢者の増加が健康食品(サプリメント)の需要を活発にしています。今後伸びてゆくマーケットとして事業者の参入も多くなっているようです。毎日TVコマーシャルでサプリメントの広報を見ない日はありません。そんな中で小林製薬が発売した「紅麹コレステヘルプ」が重大な健康被害をもたらしました。この問題に関する経緯を新聞報道によって見てみましょう。

今のところ、ブベルル酸とそれ以外の複数の化合物が混入した経緯などは明らかになっていませんが飲食関係の事業者の方や健康食品関係の事業者のかたには緊張を強いられる事態となっていることは確かです。問題になっている「紅麹コレステヘルプ」は「機能性表示食品」なのですが、この機能性表示食品とはどんなものなのでしょう。消費者庁のホームページからその説明を引いてみます。

「機能性表示食品とは?」

  • 機能性を表示することができる食品は、これまで国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていました。
  • そこで機能性をわかりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者の皆さまがそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、平成27年4月に、新しく「機能性表示食品」制度が始まりました。
  • 「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)という食品の機能性を表示することができる食品です。
  • 安全性の確保を前提とし、科学的根拠に基づいた機能性が、事業者の責任において表示されるものです。
  • 消費者の皆さまが誤認することなく商品を選択することができるよう、適正な表示などによる情報提供が行われます。

以上が消費者庁による「機能性表示食品」の説明です。特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品における検査基準を緩和して事業振興を図る意味合いもあるのかと思います。安全性の確保は大前提で、機能性については事業者の責任において表示されることになっています。それでは次に健康食品(サプリメント)業界のあらましについてみてみましょう。

 2.健康食品(サプリメント)業界の現状

(1)健康食品の市場規模

健康食品の市場規模はメーカー出荷金額ベースで、令和3年度は8,825億円(前年度比1.9%増)と推計され、令和4年度は8,925億円(同1.1%増)と見込まれていました。
新型コロナウイルス感染症拡大の中で、健康・免疫や、コロナ禍での新生活様式において生まれた
ストレス・睡眠問題や、運動不足による肥満への対策需要が高まりました。特に巣ごもり需要の恩恵を受けた通信販売市場が中心となってインバウンド需要の消失を穴埋めし、市場はほぼ拡大基調を続けています。ただし、通信販売は令和3年度に4%台の伸長を見せましたが、令和4年度以降は競争激化や新規顧客の獲得単価(CPO)の悪化などの影響を受け、市場は微増にて推移しています。

(2)健康食品の定義について

健康食品は、国が定めた基準を充足した場合に機能性等を表示できるものとそれ以外のものに分けることができます。前者の国が健康の保持増進効果を審査し機能性の表示を許可したものを「保健機能食品」といい、従来は「特定保健用食品(通称:トクホ)」(国が個別に許可)と「栄養機能食品」(国の規格基準に適合)の二つに限られていました。しかし、栄養機能食品は対象成分が限定されていることや特定保健用食品は許可手続に多くの時間と費用がかかるため中小企業にとって許可取得が困難であること等の課題がありました。そこで、規制緩和の一環として、機能性をわかりやすく表示した商品の選択肢を増やして、消費者の自主的かつ合理的な商品選択の機会の確保を促すため、健康食品の機能性表示が解禁されることとなりました。平成27年4月1日より「機能性表示食品制度」がスタートし、現在まで運用されています。

(3)機能性を表示できる保険機能食品の種類

機能性表示食品制度は、トクホよりも手軽に利用でき、消費者に対して健康価値を訴求すること
ができるため、多くの健康食品事業者に利用されています。ただし、健康食品の規制に関する法は
は多岐にわたります。主な法規制は①医薬品成分の含有や医薬品的効能・効果の標榜などを規制す
る薬事法、②事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とす
る特商法、③不当な広告や表示を規制する景表法・食品表示法が挙げられます。
厳格な行政処罰が設けられた薬事法や表示広告関連規制法により、健康食品を販売する際、医薬
的効用・効果をマーケティング戦略に活用することは困難な状況です。そのため、健康食品と医薬
品との効用の差を明確にし、健康食品の機能性を的確に訴求することで消費者ニーズを満たす必要
があります。

(4)機能性表示食品の国内市場規模推移

平成27年以降は機能性表示食品制度が開始し、各社が様々な機能性を訴求した商品の展開に注力することで、売上を伸ばす企業が増加しており、同市場の拡大に寄与しています。ヨーグルトや乳酸菌飲料が苦戦している中、健康食品(サプリメント)や加工食品では様々な訴求の機能性表示食品が新たに上市されていることなどが寄与し、好調に推移しています。
また、令和4年の乳酸菌関連商品市場は、前年比0.3%増の7,805億円となる見込みです。健康食品や加工食品では機能性の広がりのほか、独自性の高い乳酸菌の活用や乳酸菌配合商品の広がりなどにより、引き続き市場規模は拡大していくとみられます。
カテゴリー別では、ヨーグルトと乳酸菌飲料が苦戦するなか、加工食品は前年比6.9%増、健康食品は同8.9%増と好調に推移しています。内訳は、ヨーグルトが構成比60.0%の4,670.9億円、乳酸菌飲料が同26.8%の2,089億円、加工食品が同7.7%の595.5億円、健康食品が同5.5%の428.6億円となっています。

以上、簡単に機能性表示食品あるいは健康食品について記述しました。さらに詳しくは消費者庁のホームページ(https://www.caa.go.jp/)でご確認お願い致します。高齢者にとって健康寿命の維持、認知機能の持続など健康に関する課題は切実なものがあります。健康食品(サプリメント)は健康維持の強い味方だと思うのですが、健康被害の事例などを見ると安心できません。一般消費者として、心がけねばならないことを十分認知して役に立つサプリメントを活用してください。

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