第133回 かわさき起業家オーディション 川崎中小企業診断士会 応援賞贈呈
2022-12-24
12月9日(金)に、第133回かわさき起業家オーディション 最終選考会が開催されました。
コロナ感染症・変異株の切り札として、ワクチン接種が広く行き渡り、初期に比べ、死亡率低下等罹患しても重症化の程度・割合も低下しているように見受けられます。これを受けて政府は、これまでの感染防止中心から、停滞していた経済活動の再開へと舵を切り、行動制限・入国制限等を大幅に緩和し、さらに、厚生労働省がコロナの感染症法上の分類をいわゆる「2類相当」から、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への引き下げも含め見直しに向けた議論も本格化されています。一方、これら制限緩和の要因と考えられる第8波の罹患者の急増が見られます。
これからは、ZEROコロナでもない、afterコロナでもない、withコロナと認識した経済活動の変容、そして、我々の行動変容も必要ではないかと思います。更に、ウクライナ侵攻に端を発した新時代の戦争、エネルギーインフラ危機、食物不足、諸物価の高騰等のリアルに影響を感じる危機に加え、ウィルス・細菌、サイバー空間等、見えない危機等、今年から来年はクライシス新時代の幕開けだと思います
このような経済活動・社会活動においても新たな事象への対応、変容が求められ、従前の取組・考え方の延長では、これらの変化への対応が難しくなっていると感じます。
今回もリアル参加者・オンライン参加者の前で、ビジネスアイデアの力強いプレゼンテーションが繰り広げられました。多数の応募の中から最終選考会に勝ち上がった4企業の共通点は、「AIやITを活用した社会問題や事業課題の解決」であることです。
これらのビジネスアイデアの中、当会から、川崎中小企業診断士会 応援賞を株式会社AiCAN 代表取締役/CEO 高岡 昂太(たかおか こうた)様に贈呈させて頂きました。
株式会社AiCAN様のビジネスアイデアのテーマは「データ利活用で職員の意思決定を支援する児童虐待対応支援サービス」です。具体的には、自治体の児童相談所や児童虐待対応部署を対象に、過去のデータに基づいたリスクシミュレーションを行う業務支援システムと伴走型活用支援サービスを提供します。
このサービスを開発したきっかけは、高岡氏の児童相談所での勤務経験において、子供の虐待対応は個人の経験や感覚だけでなく、データにもとづく定量的判断が不可欠と感じたことです。
多くの児童相談所は、高度な判断・専門性が求められる業務にも関わらず人材不足、さらに、デジタル化や統計・科学的分析とはかけ離れた職場です。的確な知見・判断が蓄積されておらず、日々・時々刻々の対応に追われている状態で、結果として、残念ながら、高リスク事象の見過ごし等が繰り返されてしまいます。児童相談所等ではそもそも、データ活用の経験も非常に不足しています。
これらの解決支援として、製品・サービスを開発しました。事業・提供サービスの特徴は、次の5点です。
1).業務支援システム”AiCAN”(ICT):
タブレットアプリにより、現場や外出先でも、現場情報、調査記録等をその場で入力・閲覧等共有化でき、迅速性と効率化を図れる。
2)業務支援システム”AiCAN”(AI機能):
収集された現場・状況、対応情報等をAIでリスク分析し、担当者の意思決定の補助とする。
3)研修:
AIの判断精度を上げるためには、有効な教師データが必須です。このために担当者職員等に調査・データ収集の目的・意義、適切なデータ収集方法等の研修を行う。
4)分析:
収集・蓄積されたデータを分析し、課題等を明確にする。
5)伴走サポート:
前記1)~4)のサービスの導入・活用・運用について打合せ・現場確認等により、組織的・効果的課題解決ができるように伴走支援を行う。
事業基盤としての知財戦略において、国立研究開発法人産業技術総合研究所からの技術移転による「児童相談所などにおける情報処理方法及び装置」等の3つの特許に加え、自社出願の特許(特願2021-213751)「児童相談業務を支援する業務支援方法」で補強し、当該ビジネスモデル領域での差別化を図っています。
川崎中小企業診断士会は、目指す「社会課題の解決」「子供たちの未来に貢献する」を共有化できる可能性があり、また、同社は川崎市内のかながわサイエンスパークを主たる拠点としており活動エリアでも共有化できます。
川崎中小企業診断士会の会員の家族・親族・知人おいても、他人事ではありません。これまで、自治体や児童相談所の対応の不手際、連携連絡の不備等で、痛ましい事故が過去の経験が生かされずに何度も繰り返されてきました。これらの痛ましい事象の解決の一助や問題意識の再認識になることが期待されることから、(一社)川崎中小企業診断士会 応援賞を贈呈させて頂きました。
次回のかわさき起業家オーディションは、予測不能な社会状況が続いていると思われますが、令和5年3月10日(金)に第134回の開催を予定しています。コロナ第8波は沈静化していること、リアル会場でのプレゼンテーション、およびリアルなビジネス交流ができることを期待すると共に、皆様にもプレゼンテーションを盛り上げて頂けるよう願い、多数のご参加をお待ち申し上げております。
(文責:創業支援部 金子康彦)
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