KBIC(かわさき新産業創造センター)見学参加レポート
2024-12-31
今般、「新川崎・創造のもり」内に設立された首都圏最大級の複合型インキュベーションセンターである「KBIC」(かわさき新産業創造センター)の見学会が開催され、川崎中小企業診断士会より、滝沢理事長や創業支援部長の湯浅理事をはじめ11名が参加しました。
KBICとは
「新川崎・創造のもり」は、多数の企業・大学等が集積している新川崎地区のポテンシャルを活かし、産学公民連携による新たな価値の創造を目指して整備されているエリアです。
KBICは、川崎市のスタートアップ戦略に基づき、ものづくりを中心としたスタートアップ企業へのサポートを提供しています。現在は4つの共同事業体によって運営されており、「公益財団法人川崎市産業振興財団」が統括を行っています。
KBICでは複数棟合計し約100室・8100㎡以上のラボを有しており、スタートアップ研究開発型の企業を中心に入居が促進されています。その立地の利便性や施設・サポートの充実から、現在の入居率は約97%、約50社の企業がラボ内で研究開発を実施しているとのことです。各入居企業は、センター内の各施設を共通して使用することが可能です。
入居企業は、KBICのインキュベーションマネジャー等が展示会などでお声がけをして誘致することもあるようですが、近年は口コミが広まり企業側からの問い合わせが絶えない状況であるとのことです。
入居企業に向けては、主に下記のような支援が実施されています。
- 高度な設備(クリーンルーム、研修室、工房など)の提供と、経験豊富な技術者の指導による革新的技術による研究開発の支援
- 駐在マネージャーによる、川崎市の補助制度を活用した、専門家ネットワークと連携しての事業成長等幅広い支援
- 入居企業間・川崎市内企業・大学コンソーシアムとの連携や交流の機会を提供し、異分野共創型マッチングによるイノベーション活性化の支援
見学会では、川崎市産業振興財団に所属されている、かわさき新産業創造センター所長からお話を伺うとともに、KBIC本館と合わせ同様に支援施設として敷地内に設置されている、「NANOBIC」(ナノ・マイクロ産学官共同研究施設)、「AIRBIC」(インキュベーション施設産学交流・研究開発施設)の見学をさせていただきました。
NANOBIC施設見学
まず特筆すべきは、NANOBIC内で、日本初のIBM製「ゲート型商用量子コンピューター」が稼働していることです。アメリカ、ドイツに続き、世界で3番目に稼働を開始したものであるとのことです。現在は、IBMと東京大学により共同で管理・研究が実施されています。
量子コンピューターとは、量子力学の原理を利用して動く新しいタイプのコンピューターです。通常のコンピューターでは解くのに膨大な時間がかかる問題、例えば医薬品の開発、複雑な交通網の最適化、新材料の発見などを非常に速く処理できる可能性があるとして注目されています。しかし、量子コンピューターは未だ発展途中で、動かすために極低温や特殊な環境が必要であり、誤差やノイズの影響を減らす技術が課題となっています。
今回は、量子コンピューター管理環境や極低温を保つ仕組み、研究開発の実施状況についてお話を伺うことができました。このコンピューターは量子イノベーションイニシアティブ協議会に参加する企業の利用が可能となっており、現在は研究レベルでの活用が進んでいるようです。量子コンピューターの開発計画は前倒しで進んでいるとのお話で、今後の技術発展が期待されました。
実際の量子コンピューターは厳重に管理されていますが、見学では川崎市内の企業に依頼して作成された、精巧な内構造のレプリカを拝見することができました。美しく精密な構造に驚きました。
写真1 量子コンピューター内構造のレプリカ
また、NANOBICには約757㎡のクリールルームが設置されています。
クリーンルームとは、空気中の塵や微粒子、微生物を極限まで排除し、温度・湿度などを厳密に管理した環境のことです。例えば、半導体や医薬品製造、精密機器の開発等、高品質や精度を保つ必要がある精密な作業を必要とするために利用されています。
行政が保持しているクリーンルームとしては最大級の規模になるとのことです。
KBIC施設見学
KBIC内には、ものづくり工房や試作室、CAD/CAM研究室が設置されています。入居企業は、事前登録の上で各設備を利用することが可能となっており、充実した技術研修も定期的に実施されています。
今回お話を伺って驚いたのが、試作品に関するサポート体制の手厚さです。常駐されている技術コーディネーターの方がオールマイティな知識と技術をお持ちで、入居企業への技術的なアドバイスや試作品作成を支援されています。何と、外部に依頼すると納期1~2週間で万単位の費用もかかる試作品を、技術コーディネーターの方は1~2日で完成し無償で提供されているとのことです。技術コーディネーターの方のスキルに驚嘆するとともに、入居企業への支援の充実を知ることができました。
写真2 KBIC本館内の工作設備
AIRBIC施設見学
AIRBICは1階がオープンエリア、2階がベンチャー企業向けのインキュベーションフロアになっています。見学会では、オープンエリアの会議室でお話を伺いました。
施設内には商談・懇親会・交流会にも利用可能なレストランが設置されており、リーズナブルな値段で日々のランチを楽しむことも可能となっているようです。
写真3 AIRBIC会議室内
見学を終えての感想
個人的に「新川崎・創造のもり」エリアを訪れる機会があり、KBICのことは以前から存じておりました。しかし、見学会を通して知った研究開発支援設備の充実と、入居企業へのサポートの手厚さは、想像以上のもので大変驚きました。川崎市は日本一の研究開発・産業都市として、川崎の長期的発展を首都圏域全体の発展につなげたいというビジョンがあるとのことですが、まさに産学公民連携で最新の研究開発が行われている様子を垣間見ることができました。
他の見学メンバーからも、支援の手厚さや技術コーディネーターの方のスキルの高さ、量子コンピューターについて改めて知ることができたと、大変充実した見学会であったとの声が多くありました。
「新川崎・創造のもり」は、次世代への科学・技術の夢を育む場所も目指されているとのことで、子ども向けの科学イベントなども随時開催されているとのことです。ぜひ、家族と共に改めてイベントにも訪れてみたいと感じました。
この度、見学の機会を下さったかわさき新産業創造センターの皆さまに改めて感謝申し上げます。
写真4 見学者集合写真
(文責:長谷部 美喜)
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